地元「オダサガ」に根付くソウルフード「ギョウザの萬金」
県外からも人が来る「オダサガ」の名店
「オダサガ」の愛称で親しまれている小田急相模原。このまちには遠方から電車に乗って食べに来るお客さんも多い、大変人気の餃子店が存在します。店名は「ギョウザの萬金」。独特な俵型をしたパリ・モチ食感の餃子が提供されており、これがビールとの相性が抜群だと評判です。ビールと餃子に目がない私は、小田急線に乗って「小田急相模原」駅を目指しました。
「小田急相模原」駅周辺は、駅併設の商業施設やレトロな商店街が広がっています。長く続く家族経営の飲食店も何軒かあり、街に個性が感じられるのは嬉しいところ。日常の買い物から居酒屋へ飲みに行くまで、「オダサガ」でひとつの暮らしが完結できそうです。
目指す「ギョウザの萬金」は、「小田急相模原」駅から徒歩5分ほど。商店が続くエリアがそろそろ途切れるかという場所にあります。けして駅前という立地ではないものの、ここが大変な人気店なのです。
どれくらい混雑しているかというと、お昼のピークからランチ利用者が延々と続く、まもなく午後4時かというところでやっとアイドルタイムとなります。午後5時を過ぎれば今度は夕食やお酒を飲むお客さんが訪れますから、休む暇はほとんどありません。それだけお客さんが続くのですから、ベッドタウンの餃子店ながら中休みはせず、お昼から夜まで通しで営業しています。
大勢のお客さんに対応するため店は大きく、町中華風のカウンターメインの一階だけでなく、二階の個室、三階の広間まで完備しているのもポイント。三階の広間は宴会もできます。
店内飲食だけでなく、冷凍や焼きの餃子をテイクアウトしていくお客さんも途切れることがなく、小田急相模原になくはならない店であることがわかります。近所にこんなお店があれば私も通うはずです。
「ギョウザの萬金」誕生秘話
地元の人々から「おださがには萬金がある」とまで言われる、街になくてはならない店。ベッドタウンの個人店でこれだけ支持されている店は滅多にありません。そんな奇跡の店を一代で育て上げた、店主の関正二郎さんがインタビューに答えてくれました。
塩見 どういうきっかけで「萬金」は誕生したのでしょう
関さん 私、いくつに見えます?いま82歳です。20代は会社員でしたが、自分の飲食店を持ちたくて起業しました。30歳でこのお店を開いたので、店は今年で52年になります。
塩見 82歳!2代目になる息子さんやほかの若い従業員さんと変わらず、むしろ皆さんよりも動いていらっしゃるので驚きました!
関さん 元気の秘訣はお酒です(笑) 日本酒が好きで、いまも毎日、仕事が終わったら若いスタッフたちとまかない料理をつまみに飲んでいます。若い子たちと飲むとパワーがもらえますし、美味しくお酒を飲んで、それが次の日の元気に繋がるように思います。自分の力で商売をはじめて、好きなお酒を楽しもうという思いもありました。
塩見 私も酒類関連専門のライターなので同意見です(笑) それでは、つぎに独立の経緯や店名の由来について教えてください。
関さん 店名は、過去を忘れて商売繁盛という意味の「萬金忘記」という言葉から取りました。千葉県の野田にある「ホワイト餃子」という餃子店で修行をはじめ、技術を教わり、この小田急相模原で開店することができました。
当店はいまもホワイト餃子のグループ店(資本関係がない技術連鎖店)です。ホワイト餃子と同じ製法で作る焼き餃子を看板メニューに、当店独自のニラ餃子や鉄板蒸し餃子などを加えています。メニューは餃子4種類に、ライス、スープ、バンバンジーサラダなど、サイドメニューは7種類のみです。中華料理店となれば料理の品数が増え、その分仕込みに時間がかかってしまいます。私は餃子で勝負して、空いた時間はしっかりお酒が飲みたかったのです。
塩見 テイクアウトのお客さんがとても多いですが、店内とテイクアウトの比率はどれくらいなのでしょう。これだけ人気ですと、製造量はとても多そうです。
関さん 製造量は日によって異なりますが、今日は約14,000個をつくりました。約半数はお持ち帰りや通販でのご注文です。店に食べに来てくれるお客さんは地元の方だけでなく、遠方からいらしてくれる方も多いです。
塩見 家族で食べに来ていたお子さんが大人になって、また食べに来てくれそうですね。
関さん 長く続けていますと、老若男女、様々な方が常連さんになってくれます。元々当店の常連さんで、ご家族で食べに来てくれていた一家のお子さんが、当店でアルバイトをしていたりします。
それでは、そんな家族で愛される看板料理の「焼き餃子」をいただきましょう!
名物「焼き餃子」をいただいていく
フライパンに並べたギョウザは、油で揚げるように焼き上げていきます。同時にいくつものフライパンで餃子が焼かれている光景は壮観です。
しっかりと油をきり、皿に盛り付けたら完成です。
どうですか、このふっくらと焼き餃子!一般的な餃子とは違って、なんだかおまんじゅうのようですね。
酢、ラー油が入った餃子のタレにつけていただきます。
大切なものを忘れていました。餃子にはライスもよいですが、ここはやはりビールでしょう!時刻は午後4時過ぎ。通しで営業しているお店ですから、お昼から飲めてしまいます。
それでは乾杯!
焼き目側は揚餃子のようでパリパリになっていますが、ヒダ側は蒸すように焼かれており、モチモチ感がしっかりとあります。餡は野菜が多く、量が多くてもこれが結構食べ切れてしまいます。
サイドメニューとして、国産鶏や地元食材などを使用したバンバンジーと、キムチをいただきました。お酒を飲むならこの組み合わせが最高だと思います。
キムチは外国人の常連さんの要望を受け、魚介系を入れずに作ったものだと関さん。それでもしっかり旨味が効いていてビールが進みます。
お酒を楽しみながら食事をすると、つい追加で別の料理を注文したくなることがありますが、「ギョウザの萬金」では料理の注文は一回限りというルールがありますので、ご注意ください。ただし、飲み物の追加注文は可能ですので、2杯目には関さんこだわりのちょっぴり濃い目のレモン入りハイボールをオーダーしたいと思います。
「ギョウザの萬金」はお酒好きの関さんにぴったりのお店で、白いごはんだけでなくビールなどのお酒も進みます。気取らずサンダルで行けるようなお店であり、クセになる餃子の味も特徴です。まさにこの街の個性をつくる大切な存在ではないでしょうか。
今回の執筆者
塩見 なゆ
酒場案内人。1984年、東京都杉並区荻窪生まれ。新宿ゴールデン街に通った作家の両親を持つ。幼いころより中央線沿線の飲み屋へ連れて行かれ、物書きの大人と瓶ビールに囲まれて成長する。会社員として広報・宣伝畑を経て独立。趣味だった飲み屋巡りを本業とし、飲食専門のライターとなる。酒場に恋して年間1000軒以上を巡る。
URL:https://syupo.com/
※この情報は2023(令和5)年5月時点のものです。
地元「オダサガ」に根付くソウルフード「ギョウザの萬金」
所在地:神奈川県相模原市南区相南4-1-7
電話番号:042-746-5855
営業時間:11:00~21:30(L.O.21:00)
定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)
https://www.mankingyoza.com/