地元の自然と伝統で生きる力を育む地域密着校

海も山も池も、身近な自然や生き物に触れて学んで育まれる「三浦市立上宮田小学校」

2023(令和5)年に創立50年を迎えた「三浦市立上宮田小学校」は、「三浦海岸」駅から徒歩約10分。2022(令和4)年4月に同校に赴任した校長の松岡由紀先生に、東側に海、西側に山や農地が広がるこの地だからこそできる教育と、三浦海岸エリアの魅力について、お話を伺った。

「自立・貢献」を教育目標に、50周年を迎える「上宮田小学校」

校長の松岡由紀先生
校長の松岡由紀先生

――まずは「上宮田小学校」の歴史や、概要についてお聞かせください

松岡校長先生:本校の前身は、「三浦市立南下浦小学校」の分校です。1966(昭和41)年の「三浦海岸」駅開業に伴って宅地ができ、人口が増えてきたため、1974(昭和49)年4月、「三浦市立上宮田小学校」として独立し、開校となりました。当初は「南下浦小学校」内に併設開校となりましたが、同年9月に新校舎が完成して現在の土地に移転、今年で創立50年を迎えました。2023(令和5)年10月2日現在、218名の児童が通っています。

南向きに建つ「上宮田小学校」校舎
南向きに建つ「上宮田小学校」校舎

――「上宮田小学校」の教育目標は「自立・貢献」とのことですが、この目標を達成するために力を入れて取り組んでいる教育活動などはございますか。

松岡校長先生:「自立・貢献」というのはとても大きなテーマなので、すべての教育活動において意識して取り組んでいます。去年の春に赴任してきて気になったのは、子どもたちの自己肯定感の低さでした。十分できているのに、「できていない」と思っていたり、自分に自信を持てなかったりしている子が多いなと思いました。

そこで職員に、子どもたちが自分自身や友だちを認めることができるような活動を積極的に実践していこうと伝えました。たくましく生きる「自立」の力をつけるためには、自分を好きになること、自分を大切にできることがベースになります。自分を大切にできない子が他人を大切にするのは難しいですし、まずはそこから始めようと思ったのです。

最終目標と、それを達成するための日々の行動
最終目標と、それを達成するための日々の行動

松岡校長先生:活動が制限されていた期間は、低学年の子が高学年の子の様子を見て学ぶ場や、高学年の子が低学年の子を思いやって行動する場がほとんどありませんでした。本来は感謝されたり、頼りにされたりすることで高学年は高学年らしくなっていき、高学年の姿を見て低学年は憧れを持って成長していくものです。

ですから、わたしたち教員はさまざまな活動の中で、子どもたちが互いの良いところを認めたり、感謝を伝えたりできる場を作るよう心がけています。多くの集団活動が中止になって他学年の様子を見る機会がほとんどありませんでしたので、行事を再開するにあたっては、これまでより段階的に、そして丁寧な準備と指導が必要でした。

それは若手の教職員も同じで、以前は当たり前のように行っていたさまざまな教育活動の経験ができなかったため、過去の資料を探ったり、経験のある職員に聞いたりすることに時間も労力もかかり、手際よく進められないことが多々ありました。行事等を再開して2年目の今年度に入ってようやく、教員も子どもも以前のように、見通しをもって活動し、やりたいことが実現できるようになってきたので、この調子で引き続き取り組んでいきたいです。

木々に囲まれる校庭
木々に囲まれる校庭

――今年で開校50周年とのことですが、何かイベントの予定はございますか。

松岡校長先生:本校では2014(平成26)年から「かがやきのつどい」という全校児童による音楽劇等の発表会を行っていました。本校ならではの特色のある活動で、6年生がリーダーシップをとり、みんなで力を合わせて一つの作品を創り上げる一体感や、達成感を感じることができる行事でした。50周年を迎える今回は、先輩たちが築き上げてきた「かがやきのつどい」をふりかえりながら、未来へバトンをつないでいくというテーマのもと、全校発表をして50周年を祝う予定です。

創立間もない頃に植えられたヤマモモの木
創立間もない頃に植えられたヤマモモの木

海辺や里山で生き物とふれあい、環境問題も学ぶ

――海や畑といった豊かな地域の資源を活かした教育活動があれば、教えてください。

松岡校長先生:さまざまな種類の木々に囲まれている本校は、日常的に昆虫などの生き物に親しむ機会が多いです。この辺りは元々「笹塚」という地名で、本校の校章も笹の葉と海の波がモチーフになっています。

校章には笹と波がデザインされている
校章には笹と波がデザインされている

松岡校長先生:校舎の裏手には昔の地名どおり竹林があって、その間に学校の畑があります。そこにはバッタやカブトムシ、カナヘビなど里山の生き物がたくさんいるので、生活科や理科の生き物の学習では、子どもたちは夢中になって探しに行きます。学校の池に棲むカエルも人気です。

今年は、2年生が“まち探検”で「小松ヶ池公園」に行きました。池にいる淡水エビをはじめ、ここにもたくさんの生き物が生息しています。河津桜も多く、桜まつりの際には屋台も出てにぎわうので、地域の行事に触れる機会も豊富にあるように感じます。

裏山の竹林と学校の畑
裏山の竹林と学校の畑

松岡校長先生:また、学区に三浦海岸という大きな海水浴場があり、毎年遠足で行っています。ここ2年間は2年生と5年生が一緒に三浦海岸へ行き、砂浜で砂工作をおこないました。3,4年生の遠足先も海で、磯観察をしました。昨年度は海洋教育推進研究の委託を受けたので、地引き網漁を体験したり、海岸で拾った貝殻やシーグラスを使って工作をしたり、三崎の水中観光船「にじいろさかな号」に乗ったりと、子どもたちは周辺環境を活かしたさまざまな体験をすることができました。

4年生は総合的な学習の時間に海の生き物や漂着物を調べ、マイクロプラスチックなどの環境問題についても学びました。今年の4年生は三浦海岸の南側、「三浦市立南下浦小学校」の下にある「高抜(たかぬき)海岸」に行きました。ここには磯をすみかにする生き物がたくさんいるため、春,夏,秋に訪れ、季節による違いを観察して学んでいます。

上の階の教室からは海が見える
上の階の教室からは海が見える

――地域住民との関わりや交流があれば、教えてください。

松岡校長先生:地域の方との交流も休止していたのですが、昨年、横断歩道などに立って登下校の見守り活動をしてくださっている地域の方々を招いて、久しぶりに対面式を行いました。コロナ禍では子どもたちも大きな声を出しにくい状況だったと思いますが、みなさんが「毎朝子どもたちが挨拶をしてくれると、元気をもらえます」と言ってくださいました。子どもたちには、見守ってくれることに感謝の気持ちを持ち、毎朝目と目を合わせて挨拶をしてほしいと願っています。

また、今年の7月から、PTAの活動として保護者や地域の方々による朝の絵本の読み聞かせを再開しました。これからも少しずつ地域の方と交流する機会を増やしていきたいです。

さまざまな表情をみせる四季の体験が暮らしを豊かにしてくれる

――三浦海岸エリアで、ファミリーにおすすめの場所はありますか。

松岡校長先生:やはり海ですね。釣りやマリンスポーツも盛んですし、海や浜辺で気軽に遊べます。さらに、本校のすぐ近くに乗馬クラブがあって、ホーストレッキングも楽しめます。海岸に行くと、馬が砂浜をカポカポと歩いているのをときどき見かけますよ。

また、「小松ヶ池公園」は渡り鳥の飛来地となっているため、親子でバードウォッチングを楽しむこともできます。春には、池を眺めながら桜の下でお弁当を食べることもできますよ。桜といえば、春は「三浦海岸」駅から小松ヶ池までの線路沿いの河津桜並木がおすすめです。約1,000本のあざやかなピンク色の河津桜、その下には黄色い菜の花が咲いて、そこに赤い京浜急行の電車が来ると本当に素敵な景色になります。秋には、本校の近くや「マホロバ・マインズ三浦」の前など、あちこちの農園でみかん狩りもできます。こうして四季を体感できることも、三浦海岸の魅力ですね。

マリンスポーツの盛んな「三浦海岸海水浴場」
マリンスポーツの盛んな「三浦海岸海水浴場」

松岡校長先生:家族で楽しめるイベントもいろいろあります。今年は、三浦海岸の花火大会が4年ぶりに開催予定で、水面に映る様子もキレイですよ。また、毎年3月には「三浦国際市民マラソン」という大きなマラソン大会があり、大勢のランナーが訪れます。三浦市内の丘陵地帯や海岸線を走る、風光明媚な景色が続く一方でアップダウンの激しいコースのため、本格的に楽しめます。

「三浦国際市民マラソン」スタートの様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)
「三浦国際市民マラソン」スタートの様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)

松岡校長先生:小学生も5年生以上はレースに出られますし、4年生以下も大会と共にイベントとして行われている、「ビーチラン」や「みうらうまいもの市」などのイベントには参加できるので、家族みんなで楽しめると思います。

小学4年生以下が出場できる「ビーチラン」の様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)
小学4年生以下が出場できる「ビーチラン」の様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)

――三浦海岸エリアの子育て環境の魅力は、どのようなところにありますか。

松岡校長先生:三浦半島全体に言えることですが、まず気候が温暖です。冬は暖かく、夏は横浜などに比べると2~3℃気温が低いので、過ごしやすいと思います。そして自然が豊かで海が近く、魚や野菜がおいしいことです。本校の保護者にも農業に携わる方がいらっしゃいますし、直売所も点在しています。この辺りの特産品はみかんやスイカなどで、三浦大根や春キャベツもすごくおいしいです。また、三浦と言えば「三崎マグロ」が有名です。三浦海岸周辺にも、おいしいマグロを食べられるお店がたくさんあるので、ぜひ一度食べていただきたいです。

こうした豊かな自然に囲まれているのに、駅が近くて通勤や通学に便利なので、移住してくる方がいらっしゃるのもとても分かります。本校にも移住してきた子が通っていて、ご両親が「子どもは野菜が苦手だけど、三浦は野菜がおいしいから食べられるようになってくれてうれしい」とおっしゃっていました。

三浦の美味しいものが集まる「みうらうまいもの市」の様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)
三浦の美味しいものが集まる「みうらうまいもの市」の様子(提供:三浦国際市民マラソン事務局)

――最後に、これから三浦海岸エリアにお住まいになられる方々へメッセージをお願いします。

松岡校長先生:自然が豊かで、地域の人々があたたかく、都会とは違う親しみやすさが感じられると思います。昔ながらの商店が残っている「三浦海岸」駅前のほのぼのとした雰囲気も良いですし、駅から7分歩けば海があります。そして、海沿いにはおしゃれなカフェがどんどん増えてきています。3年ほど前に三浦縦貫道が延伸して、ここから5分ぐらいのところにも高速道路の入口ができたので、車で出かけるにも便利になりました。ぜひあちこち散策していただき、お気に入りの場所を見つけてほしいです。

 

三浦市立上宮田小学校

校長 松岡 由紀 先生
神奈川県三浦市南下浦町上宮田3040番地 :
046-888-0053:
URL:https://www.city.miura.kanagawa.jp/soshiki/gakkokyoikuka/gakkokyoikuka_gakumu/1862.html
※この情報は2023(令和5)年10月時点のものです。

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