スペシャルインタビュー

市民交流拠点の整備や土地開発を推進し、価値向上と魅力創出に力を入れる「三浦市役所」

海水浴やマリンスポーツ、新鮮なマグロなど観光地としても知られる神奈川県三浦市。多くの自治体と同様、人口減が喫緊の課題となっている中、その恵まれた環境から、近年は移住先としての人気が高まっている。今回は三浦市政策部の矢尾板昌克さんを訪ね、課題解決のための施策や三浦市の魅力についてお話を伺った。

人口減少に歯止めをかける、大規模プロジェクトが複数進行中

城山町にある「三浦市本庁舎」
城山町にある「三浦市本庁舎」

――まずは三浦市の歴史と概要を簡単に教えてください。

矢尾板さん 江戸時代には港町としてにぎわい、次第に漁港としての整備が進みました。1955(昭和30)年に三崎町、南下浦町、初声村が合併して三浦市となりました。

三浦市は、三方を海に囲まれた三浦半島の南端にあり、温暖な気候に恵まれています。神奈川県の5観測地点中、日照時間は1位です。また、マグロで有名な三崎漁港などがあって漁業が盛んですし、面積の3分の1を畑が占め、農家も多くあります。

そして、京浜急行「三浦海岸」駅から「品川」駅まで電車で約70分、「横浜」駅まで約50分と都市部へのアクセスの良さも特徴です。人口は4万人余り。昨年度は転入者数が転出者数を上回っています。

三浦市の概要と魅力(提供:三浦市)
三浦市の概要と魅力(提供:三浦市)

――移住者も徐々に増えてきている中で、より三浦市が発展していくために、現在はどのような施策を講じられていますか。

矢尾板さん いくつかのプロジェクトが進行中です。第1段階は済んでいて、市の中心地区である引橋で進めている市民交流拠点整備事業です。「県立三崎高等学校」の跡地に、スーパーマーケット「ベイシア三浦店」と「三浦市市民交流センター」から成る市民交流拠点が2019(令和元)年にオープンしています。敷地内には2017(平成29)年4月から横須賀市との広域化により運営している消防庁舎もあります。

三浦市で行われる市民交流拠点事業の数々(提供:三浦市)
三浦市で行われる市民交流拠点事業の数々(提供:三浦市)

矢尾板さん また、第2段階として、2026年4月にこの敷地内に市役所本庁舎が移転する予定です。まだ詳細は決まっていませんが、庁舎の移転整備と併せて図書館や商業施設などを設ける予定となっています。また、新庁舎の建設と同時進行で跡地にも民間事業者による商業開発を行い、集客できる施設を作ろうと考えています。

次に、水産業・海洋性レクリエーションを含む海業拠点地区として6次経済の実現を目指す二町谷地区の開発事業があります。2020(令和2)年3月に事業者が埋め立て地を購入して開発を始めました。予定では、大型ヨットが停泊できる係留施設、ホテルやヴィラといった宿泊施設、商業施設、ヘリポートなど富裕層をターゲットとしたリゾート施設が建てられることになっています。

利便性の向上やリゾート開発等によって三浦市の魅力を向上させ、人口の流出抑制と流入増加に努めています。

二町谷地区の開発事業予定地(提供:三浦市)
二町谷地区の開発事業予定地(提供:三浦市)

――「3つのS(シンプル・スピード・サービス)」を市政の基本方針として取り組まれている中で、移住・定住人口を増やすためにどんな取り組みをされていますか。

矢尾板さん 若い世代に住んでもらうために、子育て支援にも力を入れ始めたところです。象徴的な取り組みとして、子育て賃貸住宅棟整備事業に伴う「南下浦市民センター」の建て替えが挙げられるでしょう。老朽化が進んでいた三浦海岸エリアの公民館「南下浦市民センター」を取り壊し、子育て層のみが入れる賃貸住宅を上階に、下層階に新しいコミュニティセンターと図書館の分館を整備します。本施設は、2024(令和6)年6月から供用開始予定です。

また、移住政策としては、移住希望者向けの冊子「MIURA」を無料で配布しています。6組の移住者インタビューや、小説家いしいしんじ氏の寄稿文などをまとめたもので、非常に好評です。

移住冊子「MIURA」を紹介する矢尾板昌克さん
移住冊子「MIURA」を紹介する矢尾板昌克さん

矢尾板さん 市独自の施策としては、「三浦移住学」という移住希望者向けの講座を、年に2回ほど行っています。移住当事者によるリアルなエピソード、地元の不動産屋による住宅事情の説明、コワーキングスペース運営者によるリモートワークの実態など多彩な話を聞ける講演に加え、市内を巡るバスツアーなども実施しています。

さらに、空き家等を活用して三浦市に短期間住んでいただく、民間事業者が実施する「トライアルステイ」も紹介していまして、移住検討者には観光では分からない三浦の魅力をぜひ体験してもらいたいですね。結婚支援も行っていまして、実際に結婚に結びついた例も1組ありました。他にも、地元企業と連携した移住者の雇用支援など、数多くの支援を実施しています。

日々の暮らしの中で感じる人の温かさが、三浦の大きな魅力

――「とにかく人が温かい」という移住者の方々の声を多く聞きます。なぜ三浦の人々にはそういった特徴があると思われますか。

矢尾板さん 三浦の人がよそから来た人にも親切なのは、昔から続くマグロの遠洋漁業がひとつの要因ではないかと思います。マグロ船には日本各地から集まった漁師が乗るので、自然といろんな人を受け入れる気質が育まれたのかもしれません。船上で長期間さまざまな人と苦楽を共にするマグロ漁師の対応力みたいなものが、いつしかこの地に根付き、継承されてきたのかなと思います。漁師言葉はぶっきらぼうに聞こえるかもしれませんが、一度打ち解けるとみんなすごく優しいです。

マグロ漁の水揚げの様子(提供:三浦市)
マグロ漁の水揚げの様子(提供:三浦市)

――三浦市には多くの観光客が訪れる場所ですが、住んでみてわかる魅力にはどんな点が挙げられますか。

矢尾板さん 移住者のみなさんと同じになってしまいますが、やっぱり三浦で暮らしていると人の温かさを感じることが多いです。留守の間に、近所の農家さんや漁師さんがおすそ分けを届けてくれたりします。あとでその人と会ったときに、「置いといたから食べなよ」って声をかけてくれたりして。農家さんや漁師さんが多いエリアならではの文化でしょうね。

移住相談でも農作業をやりたいという人が多く、穏やかな海があり、緑が豊かで、温暖な気候に恵まれているこの豊かな自然環境も、改めて三浦市の魅力と感じます。

――「三浦市民交流センター ニナイテ」に求める役割や、定住前後の活用法について、お聞かせください。

矢尾板さん 市民交流センターは市民の自発的な活動や地域資源に関する情報の受発信、体験活動の場で、市民同士の交流を促すのが役割です。具体的には、市民団体や有志のグループのサークル活動を支援したり、市民が参加しやすいよう活動内容を紹介したりしています。新たにサークルをつくりたい場合は相談に乗ってもらうことができ、イベントやセミナーを開いたりする手助けもしてもらえます。

「三浦市民交流センター ニナイテ」の交流スペース(提供:三浦市)
「三浦市民交流センター ニナイテ」の交流スペース(提供:三浦市)

矢尾板さん また、昨年度は、三浦市では「区」と呼んでいる各地域の自治会が写真展を開いたり冊子を作ったりして、それぞれの区の取り組みやスポットを紹介するイベントをやっていました。これは移住してきた方にも参考になったでしょう。三浦市は自治会の加入率が9割超と県内でも高い方なんですよ。昔からの流れなのでしょう。地域住民の結びつきは強い方だと思います。

多様な人々が集い、市内外の交流を支える三浦海岸エリア

――三浦市における三浦海岸周辺の位置づけと魅力、将来像をお聞かせください。

矢尾板さん 三浦海岸エリアの魅力は、生活圏に海があることと、利便性の高さでしょう。駅から徒歩数分の場所に、穏やかな海と広い砂浜があります。日常的に海辺で子どもを遊ばせたり、ペットとの散歩などで、海が生活圏のひとつになっていると思います。駅前にはスーパーマーケットや飲食店もあり、利便性の高さは市内で1番ですね。

駅近物件に住めば東京方面への通勤も苦ではないため、2拠点居住を検討している方もいらっしゃいます。付近にはコワーキングスペースもあるので、さまざまなライフスタイルの方に合う場所かと思います。

「三浦海岸」駅前にある「京急ストア 三浦海岸店」
「三浦海岸」駅前にある「京急ストア 三浦海岸店」

矢尾板さん また、畑などが多い三浦市において、三浦海岸エリアは数少ない市街化区域であり、市内でも栄えている地域と言えます。三浦市の総合計画上でも「地域交流核」として位置づけられ、定住・交流を支える機能が集まっています。横浜や都心との市外交流はもちろん、東海岸沿いのエリアなどとの市内交流の場でもあります。今後も、若い世代を中心にいろんな職種の人が交流できる場として、より発展していってほしいと願っています。

――海水浴場や農地など豊かな自然環境を活かした教育方針として、「みうら学」が挙げられますが、三浦海岸エリアの学校では、具体的にどういった取り組みが行われているのでしょうか。

矢尾板さん 三浦市には「みうら学・海洋教育研究所」という研究機関があり、東京大学や神奈川県立海洋科学高校、地元事業者などと協力して、海に親しむプログラムを多数提供しています。漁師さんに話を聞いたり、漁船を見学したり、海岸の清掃を行ったり、漂着物とからめてマイクロプラスチック問題について学んだり、どの地域の学校でも海に関する体験を中心とした学習を進めています。三浦で働くいろんな職業の方々にお話を聞くことで、子どもたちは三浦について知識を深め、郷土への誇りと愛着を育んでいます。

海洋教育の様子(提供:三浦市)
海洋教育の様子(提供:三浦市)

――最後に、これから移住される方、移住を検討している方に対してメッセージをお願いいたします。

矢尾板さん どんな些細なことでも構いませんので、まずはお気軽に政策課にお問い合わせください。移住相談窓口の担当者が、それぞれのご希望やライフスタイルに合わせてアドバイスさせていただきます。ご相談内容に合わせてイベントやセミナーもご紹介しますので、ぜひ一度参加して三浦について知っていただきたいです。

また、SNSやホームページ等で、市も情報発信をしています。子育て専用のX(旧Twitter)のアカウントも去年開設しましたので、子育て世帯の方はそちらもご覧になってみてください。親子向けのイベント情報や子どもの予防接種についてなどの情報を掲載しています。

 

三浦市 政策部 子ども政策担当部長 政策課長 矢尾板昌克さん
三浦市 政策部 子ども政策担当部長 政策課長 矢尾板昌克さん

三浦市役所

三浦市 政策部 子ども政策担当部長 政策課長 矢尾板昌克さん
所在地:神奈川県三浦市城山町1-1
電話番号:046-882-1111
URL:https://www.city.miura.kanagawa.jp/
※この情報は2023(令和5)年10月時点のものです。

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