三浦半島のエリアマネジメントを推進し観光客や定住人口の拡大を目指す「京浜急行電鉄株式会社」

東京都心から羽田空港、横浜や三崎口をつなぐ京急電鉄。近年は都心からのアクセスに優れた三浦半島のエリアマジメントに力を入れており、昨年は特典付きのお得な乗車券として人気の「みさきまぐろきっぷ」をデジタル版としてリリースした。今回は、同社の新しい価値共創室に所属する佐々木忠弘さんに、三浦半島のエリアマネジメントや地域の魅力について伺った。

新しい価値共創室 価値創造担当 課長の佐々木忠弘さん
新しい価値共創室 価値創造担当 課長の佐々木忠弘さん

スマホひとつで複数の交通手段の予約や支払いができる「三浦COCOON」

――まずは、佐々木さんの所属する「新しい価値共創室」の概要についてお聞かせください。

佐々木さん 2023(令和5)年4月1日付で新設された部署です。元々あった広報マーケティング室に、鉄道事業を担う部署から「みさきまぐろきっぷ」の販売などを行うチームと、不動産やレジャーなどの事業を担う部署から地域連携を行うチームが移って、3部署が合体したような部署になります。

事業環境が大きく変化するなか、鉄道会社の事業は、「移動」に加えて「住む」「働く」「遊ぶ」「学ぶ」などの機能を沿線各地に充実させていく総合力が大切になってくるため、中長期的な視点からグループ全体に係る事業戦略を立案して、新しい価値創造の全体最適に向けた総合調整機能を担っています。

具体的なサービスのレベルでも、例えばきっぷのデジタル化を通じて、現地の混雑具合を予測し繁忙期は「みさきまぐろまっぷ」の販売方法を見直すなど、臨機応変かつ迅速な対応ができるようになりました。

「みさきまぐろきっぷ」による「フリー区間マップ」(引用:COCOON Project)
「みさきまぐろきっぷ」による「フリー区間マップ」(引用:COCOON Project)

――京急電鉄が推進されている「三浦半島エリアマネジメント」の概要を教えください。

佐々木さん 「都市近郊リゾートみうらの創生」という中期経営計画を実現するための事業です。三浦半島には多くの観光客が訪れますが、その大半は日帰りで、長時間滞在者が少ないという課題があります。これを克服するために事業者とともに滞在拠点の再整備に取り組むとともに、自治体、企業、地域住民らをつなげるコミュニケーションハブとして観光型MaaSなどを推進しています。

MaaSとは「Mobility as a Service」の略語で、交通手段をアプリ上でつなぎ、スマホひとつで複数の交通手段の予約や支払いができるサービスを示しているのですが、きっぷや地域のアクティビティを予約する人の数を増やして、実際に利用していただけるMaaSとすることを目指しています。そのために、自治体や地域住民と連携してシェアサイクルのポートを一つずつ増やすなど、地道な活動も続けています。

三浦半島のエリアマネジメントについて説明する佐々木忠弘さん
三浦半島のエリアマネジメントについて説明する佐々木忠弘さん

――では、その観光型MaaS「三浦COCOON(コクーン)」の、具体的な内容を教えてください。

佐々木さん 2020(令和2)年10月に開始したオンラインサービスで、アクティビティ予約、オンライン決済、デジタルチケットの購入、経路検索などができます。アプリをインストールする必要はなく、WEB上で誰でもすぐに利用可能です。経路検索機能では、鉄道やバスだけでなくレンタルサイクルや電動キックボード、トゥクトゥクなどさまざまな乗り物を組み合わせて最適な移動手段を探せます。事業者はそれぞれのサービスを広く発信でき、利用者は移動やアクティビティなどをまとめて調べられます。観光事業者、自治体、企業が連携し、地域が一体となって三浦半島観光のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。

また、「三浦COCOON」は混雑対策としての役割も大きいです。三浦半島はGWなどの特定の時期に特に混みやすく、三浦海岸だと河津桜が咲く2月と、海水浴の盛んな夏休みあたりが混みます。これまではこういった利用者のデータを全く活用できていませんでしたが、今後はデータを混雑予測などに活かして「みさきまぐろきっぷ」の価格を柔軟に変動させるなど、繁閑を考慮した対応も進めていきたいと考えています。

「三浦COCOON」イベント時の集合写真(引用:COCOON Project))
「三浦COCOON」イベント時の集合写真(引用:COCOON Project))

生活拠点としての発展が期待できる、注目の三浦海岸エリア

――佐々木さんは三浦市全体へ広く知見をお持ちですが、これまでどのようにこのエリアと関わってこられたのでしょうか。

佐々木さん 三浦市には人事交流で行っていたことがあり、約2年間「三浦市役所」で働いていました。毎日のように市内を自転車で走り回り、観光協会のサイトリニューアルなど、いろいろ実施しましたね。そこからの付き合いですので、三浦市にはお世話になった方々も多くいます。京急電鉄復帰後もそのネットワークを活用させてもらいながら、三浦半島をはじめとするエリアマネジメントを担当し、地域連携やまちづくり戦略などに関わってきました。

三浦市観光協会のサイト「みうら観光ガイド」(引用:「みうら観光ガイド」)
三浦市観光協会のサイト「みうら観光ガイド」(引用:「みうら観光ガイド」)

――以前から三浦市との関わりがあったのですね。では改めて、「三浦海岸」で暮らす魅力についてはどう感じられますか。

佐々木さん 自然が豊かで、魚や野菜が新鮮でおいしい。小学校も近くにある。一家で移住される方が結構いらっしゃるんですが、やはりこういった環境で子育てをしたいという方は、増えてきていると感じます。駅が近いから通勤もラクでありつつ、羽田空港にも電車一本で行けます。それと京急には「モーニング・ウイング号」という座席指定券があって、朝の通勤時間帯でも座れます。車内で仕事もできていいですよね。

移住希望者に移住理由やきっかけを聞くと、「遊びに来て魅力にはまった」「思っていたより都心から近かったから」と言う人が多いです。

また、親切な人が多いところも私は気に入っています。例えばよく行くお店の方から、「これ持ってけよ」と大根を持たせてもらったり、遊びに行くと地元の人が近道やおすすめルートをやたら教えてくれたり。あと、バス通りから一本入ると素敵な路地がいっぱいあるんですよ。バス通りを通るのがもったいないっていうぐらい。三浦海岸に行ったら、ぜひ路地裏を歩いてみてほしいですね。

バスが通る表通りから少し外れた、路地の風景
バスが通る表通りから少し外れた、路地の風景

――三浦半島における「三浦海岸」エリアの位置づけ、今後のエリアマネジメント方針などをお教えください。

佐々木さん 三浦海岸は三浦市の中では人が多く、駅前にスーパーマーケットや飲食店があり、利便性の高い街という印象です。最大の特長は、駅から海が近くて歩いて行けること。そしてその海の砂浜が広いことです。駅から7分歩けば海と広い砂浜があり、しかも「品川」駅から約75分で行ける。それでいてのどかな雰囲気を保っている。そんなところは他にはなく、とても価値の高い場所だと思います。

三浦海岸の広い砂浜
三浦海岸の広い砂浜

三浦半島は以前から温暖で風光明媚な観光地として人気がありましたが、コロナ禍で働き方が変わってテレワークが普及したことで、暮らす場所としての評価も高まっています。週2くらいなら、都心まで通うのもちょうど良い。三浦海岸はまさにそういう場所であり、そういった新しいライフスタイルを選ぶ人は今後もっと増える可能性があると感じます。

例えば横浜に住んでいる人なら、都心に行くのも三浦海岸に行くのも時間的には一緒です。シェアオフィスやコワーキングスペースでの業務を認める会社が増えれば、三浦海岸で海を眺めながら仕事をするワーケーションのような働き方をする人も増えるかもしれません。

移住セミナーの状況を見ても移住希望者は多いですし、海沿いには「BEACHEND CAFE(ビーチエンドカフェ)」などお洒落な店も増えてきていて、三浦海岸はこれからもっと伸びるエリアだと思います。ただ、今のところ住みたい人やお店を開きたい人がたくさんいるのに物件が少ないことが課題です。こういった課題の解決を含め、今後力を入れてきていきたいエリアですね。

「BEACHEND CAFE(ビーチエンドカフェ)」
「BEACHEND CAFE(ビーチエンドカフェ)」

――最後に、これから三浦海岸エリアにお住まいになられる方々へメッセージをお願いします。

佐々木さん 三浦海岸は自然豊かで食が豊かなところです。海だけではなくて山の魅力もあり、魚だけでなく野菜もおいしい。移住者も多い場所なので、都市部などから移り住んでくる人々を快く受け入れてくれる雰囲気もあります。地元の人たちは親しみやすく面白い人が多いので、仲間もつくりやすいんじゃないかと思います。人付き合いが好きな方、地域住民との交流を楽しみたい方には特におすすめのエリアです。

 

新しい価値共創室 価値創造担当 課長 佐々木 忠弘さん
新しい価値共創室 価値創造担当 課長 佐々木 忠弘さん

京浜急行電鉄株式会社

新しい価値共創室 価値創造担当 課長 佐々木 忠弘さん
所在地:神奈川県横浜市西区高島1-2-8(横浜本社)
電話番号:045-225-9245
URL:https://cocoonfamily.jp/miura/
※この情報は2023(令和5)年9月時点のものです。

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