スペシャルインタビュー

学生から市民まで、垣根を超える教育で地域・社会貢献を目指す「相模女子大学」

小田急線「相模大野」駅北口から歩いて10分ほどの場所にある「相模女子大学」は、広大な構内に、幼稚部(認定こども園)、小学部、中学部・高等部、大学・短期大学部、大学院が揃う総合学園。緑豊かなキャンパスに約4,000人の学生が学び、“さがじょ”の愛称で地域からも親しまれ、相模大野エリアのにぎわいの一端を担う存在だ。

 

今回はそんな「相模女子大学」で長年教授を務められており、2021(令和3)年4月に就任された田畑雅英学長を訪ね、同大学の理念や教育への思い、地域との関わりなどについてお話を伺った。

相模女子大学 田畑雅英学長
相模女子大学 田畑雅英学長

目次

創設者の想いを受け継ぐ「高潔善美」の精神
地域と連携し、さまざまな学びに開かれる場
総合学園ならではの利点と、広がりのある学生生活
コンパクトで、地形や人も穏やかな相模大野エリア

 

創設者の想いを受け継ぐ「高潔善美」の精神

――まずは、「相模女子大学」の沿革についてお聞かせください。

 

田畑学長: 本学は1900(明治33)年、創立者の西澤之助という人物が現在の文京区湯島に作った「日本女学校」が発祥となり、1909(明治42)年に設立された「帝国女子専門学校」が前身となります。日本で現存の女子大学のなかでは4番目に古く、まもなく創立125周年を迎えます。

現在の相模大野の地には、1945(昭和20)年3月の東京大空襲で校舎が全焼したため、翌年に移転してまいりました。「相模女子大学」の名称になったのは1949(昭和24)年です。その後、中学部・高等部、幼稚部、小学部、短期大学部と徐々に増やし、1951(昭和26)年にはほぼ現在に近い形になりました。

キャンパスのシンボル棟「マーガレット本館」
キャンパスのシンボル棟「マーガレット本館」

 

――学園全体の教育理念などがあれば教えてください。

 

田畑学長: 創立者・西澤之助の『高潔善美 -固き心を以て、やさしき行いをせよ- 』という言葉がありまして、これが今にも通じる本学の建学の精神になっています。

 

また、2010(平成22)年には創立110年を機会に『見つめる人になる。見つける人になる。』という新たなスローガンを定めました。本学の特徴として「発想教育」というものもひとつの柱としています。優れた「発想」というのは、日頃のものの見方や考え方、いろいろなものに対する興味、知識、感受性など、その人の“人格の総体”のようなものから生まれるわけです。つまり「発想」とは、「見つめる、見つける」力。そうした力を身に付け、地域や社会に貢献できる人材の育成を目指しています。

創立者の西澤之助の言葉「高潔善美」
創立者の西澤之助の言葉「高潔善美」

地域と連携し、さまざまな学びに開かれる場

――雑誌『日経グローカル』の「大学の地域貢献度調査」でほぼ毎年、全国の女子大でNo.1の評価を獲得されていますね。地域連携、地域貢献について、どのような方針で取り組まれていますか?

 

田畑学長: 本学が地域貢献に力を入れるきっかけとしては、2008(平成20)年に農林水産省が主催した「田舎で働き隊」という事業に応募して、15名くらいの学生が三重県熊野市に滞在し、農村体験を行う機会があったことです。そこから熊野市との連携が生まれ、やがて福島県本宮市、新潟県佐渡市、京都府和束町など、さまざまな地域へと広がっていきました。

各地域での活動報告も掲載されている
各地域での活動報告も掲載されている

最初は農作業の体験のみでしたが、各地が抱えている問題に対して学生の目線で解決の提案を行うようになり、それを体系的に行えるように組織を作っていきまして、現在に至っています。その地域連携の窓口となっている専門の事務部署もありまして、それが「夢をかなえるセンター(連携教育推進課)」となっています。 

「夢をかなえるセンター」連携教育推進課
「夢をかなえるセンター」連携教育推進課

従来は地元以外の地域との取り組みや結びつきが強かったのですが、近年は神奈川県、あるいは相模原市との連携に積極的に取り組んでおりまして、これからまさに、地元とのさまざまな提携活動を行おうとしているところです。私どもとしてはやはり、立地しているこの相模大野エリアで、地域社会とともに大学が発展し、地域の皆様に「私たちの地域の大学」と思っていただきたいと考えております。 

たとえば、地元の酒造さんとのお酒造りなどを行っていて、スパークリングの日本酒や、本学の中にある梅の木から実をとって梅酒を作ったり、いろいろな取り組みが生まれてきております。

地元の「久保田酒造」さんと一緒につくった梅酒「翠想」
地元の「久保田酒造」さんと一緒につくった梅酒「翠想」

――「地域に開かれた大学」という観点で、生涯学習にも積極的に取り組まれていたそうですね。

 

田畑学長: そもそも、日本の大学の大きな特徴として、「学ぶ人の年齢が著しく偏っている」という点があります。ご存知の通り、日本の大学では18歳から22歳の人口が圧倒的多数を占めているわけですが、海外を見ると、さまざまな年齢の多様な立場の人が、必要に応じて、あるいは折に触れて、学び直しや新しいことを学んだりする場というのが「大学」なんですね。 「相模女子大学」もそうありたいと考えていまして、生涯学習、生涯教育ということには従来から力を入れています。

 

これまで実施してきた「さがみアカデミー」という生涯学習講座は、リタイア世代の方々の受講が多いのですが、2023(令和5)年の夏から試験的に実施する「子育て世代の学び講座」は、その名の通り子育て世代に対象を絞っており、今後は様子を見ながらより体系的に発展させていきたいと考えています。

「夢をかなえるセンター」
「夢をかなえるセンター」

また私どもの構想する「生涯教育」としては、これらの「教養」的な位置づけのものとは別に、女性が社会の中でもっと活躍していけるための「キャリア」の後押しができるような、学びの場の提供があります。

 

それに当たるのが2022(令和4)年から始めた「リーダーシップ育成講座」で、実際に企業などで働く女性の方が、自分のキャリアアップやスキルアップのために、日頃から問題意識を持って考えていらっしゃることを解決したり、あるいは新たな展開や視野を持っていただけるような講座を用意しています。地元企業の研修の場などとしても利用していただきたいですし、ゆくゆくは、こういった「生涯教育」も大学の安定した教育システムの中に位置づけながら、社会のニーズに応えていきたいと考えております。

2025(令和7)年に創立125周年を迎える
2025(令和7)年に創立125周年を迎える

まだ計画段階ではありますが、創立125周年を記念し、地域の方との交流の場となるような建物の建設計画が立ち上がっており、検討を始めたところです。大学と地域の方との交流の場となり、新しいものが生まれていくような、交流の場づくりを進めていきたいと思っております。

総合学園ならではの利点と、広がりのある学生生活

――教育の場として、幼稚部から大学院までの教育機関をワンキャンパス内に備えていることによる利点はありますでしょうか?

 

田畑学長: 先ほど本学の教育の基盤となる「高潔善美」のお話をしましたけれども、一貫した精神のもとで体系的な教育が行えるということが、一つ大きなメリットだと思います。

 

また、一貫した教育を行うことによって「余裕」も生まれるかと思います。たとえば、普通に中学まで行ったとしても、その後短いスパンで高校、大学受験、就職試験などがあり、そのための勉強が必要だったり、心配があったりします。その点、幼稚部から大学までつながっているので、比較的ゆったりとした流れで取り組むことができるかと思います。

 

あとはやはり、落ち着いた雰囲気、交友関係の中で、まるで家にいてリラックスしている時のような穏やかな気持ちで教育を受けられるという点もメリットかと思います。

キャンパス内は緑も多く、落ち着いた雰囲気
キャンパス内は緑も多く、落ち着いた雰囲気

――学生たちのキャンパスライフの様子や、大学のバックアップ体制などについてお聞かせください。

 

田畑学長: 学業以外の部分で、学生の間で盛んに行われていると感じるのは、やはり、地域連携や社会活動に関わるような活動でしょうか。これは本学ならではの特徴と言えると思います。地域連携に関しては、学年や学部・学科の枠を超えて参加できますので、部活動やサークルなどと同じように活動をしております。大学側としては、就職支援や資格取得の後押しなどもきめ細かく積極的に行っております。

 

キャンパスライフの部分では、「相生祭(あいおいさい)」という学園祭が毎年11月の3・4日にあります。これは幼稚部から大学、大学院まで、全体でひとつのお祭りを実施しますので、非常に盛り上がります。サークルの発表や、交流のある全国の地域と連携した物産展なども開きますので、近隣から一般の方にもたくさんお越しいただいています。

 

部活やサークルなどの活動に関しても、他の大学と連携してコンサートを行ったりと大学間交流が行われていますので、学年も学科も、大学の垣根も超えた、広がりのある学生生活を楽しめると思います。

地域との交流も生まれる「相生祭(あいおいさい)」
地域との交流も生まれる「相生祭(あいおいさい)」

コンパクトで、地形や人も穏やかな相模大野エリア

――相模大野エリアの地域性や環境は、子育て・教育にどのような魅力があると思いますか?

 

田畑学長: 相模大野エリアにはコンパクトにさまざまな施設が揃っていることが魅力ですね。たとえば、日常の買い物ができる施設や、駅近くには大きな「相模大野中央公園」があり、学校や大学もありますし、図書館や、本学の名前を冠した「相模女子大学グリーンホール」などの文化施設もあり、ぎゅっと詰まっている点は魅力的かと思います。

 

「相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)」
「相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)」

また、視点が変わりますが、「(地形が)平坦」ということも大きなメリットですね。私は以前、山の上にある大学で働いていた時期もありましたので、非常に苦労したので、平らで移動しやすい点に感激しています。

 

そして何より、人々の「気質」ですね。これは私の感覚ですけれども、相模大野エリアはさまざまな世代の方が、自然に、穏やかに過ごし、行き来をしている街だと感じています。平凡なことに思えるかもしれませんが、実はたいへん貴重な、この地域の魅力ではないでしょうか。

 

――子育て世代の方におすすめの場所などがあれば教えてください。

 

田畑学長: 相模原市内では「相模原麻溝公園」が子育て世代に人気が高い公園とよく聞きます。広いので一日遊べますし、いろいろな遊具もあって、デイキャンプもできるそうです。ほかにも「神奈川県立相模原公園」などもありますね。

 

「相模原麻溝公園」
「相模原麻溝公園」

あとはもちろん外せないのは、本学・「相模女子大学」です。春には「百年桜」という大きな桜が見事に咲きますし、夏は緑が豊か、正門からまっすぐ伸びるイチョウ並木は、秋に紅葉すると黄金色に輝いて、美しい光景が見られます。冬の雪景色のキャンパスも綺麗ですよ。学園祭の時期と、お花見の時期にはキャンパスの一般開放などもしていますので、地域の方にもぜひ親しんでいただければと思っております。

満開の「百年桜」(提供:相模女子大学)
満開の「百年桜」(提供:相模女子大学)

 

相模女子大学 田畑雅英学長
相模女子大学 田畑雅英学長

相模女子大学

田畑雅英 学長

住所:神奈川県相模原市南区文京2-1-1
TEL:042-742-1411(代表)
URL:https://www.sagami-wu.ac.jp/
※この情報は2023(令和5)年7月時点のものです。

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