本当のきょうだいの様に学び、成長できるが魅力の「川崎市立東大島小学校」

川崎市立東大島小学校」は、川崎市を構成する7区の中で唯一海に面している川崎区内にある学校だ。今回は、川崎区や大島エリアのの子育て環境を知るため、改修工事が進む同校を訪ね、赴任して3年目の押田春美校長先生に、学校の特色やこのエリアの魅力について伺った。

学年を越えて児童全員が仲良くなれる、小規模校ならではの魅力

押田春美校長先生
押田春美校長先生

——学校の歴史や概要、教育方針についてお聞かせください。

押田校長先生:1955(昭和30)年に、近くの「向小学校」から分かれて開校しました。2023(令和5)年4月時点の全校児童数は219名です。これは市内の他の学校と比べて少なく、45年生が1クラスずつ、他の学年は2クラスずつの10クラス。それに支援級が3クラスあり、合計13学級です。教育目標には「元気な子心のやさしい子すすんで学ぶ子」を掲げています。

「川崎市立東大島小学校 」外観
「川崎市立東大島小学校 」外観

本校には、誇らしい歴史があります。本校では昭和40年代頃まで版画が盛んで、1972(昭和47)年には版画コンクールで学校賞を受賞したと聞いています。当時は版画クラブがあり、子どもたちは遅くまで学校に残って版画制作に没頭し、保護者の方がお弁当を持ってきてくださっていたそうです。

今年の初夏には所有する3作品を「町田国際版画美術館」に貸し出し、民衆版画運動を紹介する展覧会で展示されました。また、「芸術新潮」という美術冊子に取り上げていただいたこともあります。今、版画クラブはありませんが、卒業生の力作が認められるのは嬉しいことですね。

校長室に飾られている版画作品
校長室に飾られている版画作品

——児童数が少ないからこその魅力などがあればお教えください。

押田校長先生:大規模校に比べると、児童全員に目が行き届きやすいと思います。あの子がこんな親切をしていたといった情報もすぐに教職員間で共有されます。

そして、一番はなんといっても縦割り活動の「きょうだい班活動」ですね。大きい学校だとなかなか難しいのですが、小規模校なので全校児童が本当に仲良くなるんです。入学すると4色に振り分け、それぞれの色グループで活動します。

運動会など、さまざまな行事を「きょうだい班」で行うため、準備の意味もあり行事の前に「きょうだい班活動」を行うことが多いです。活動の一環として、休み時間に異学年で一緒に遊ぶ「なかよしタイム」なども行っているので、放課後もよく一緒に遊んでいます。

夕陽を受けるL字型の校舎
夕陽を受けるL字型の校舎

川崎市には、子どもたちが放課後などに公立小学校で遊んで過ごせる子育て支援事業「わくわくプラザ」があり、多くの子が利用していますね。他の学校だと4年生以上になるとあまり利用しなくなるんですが、本校の子たちは6年生になっても利用する子もいて、みんなで下級生の面倒を見ています。

先月、1・2年生の合同遠足で「しながわ水族館」に行ったのですが、このときのグループ行動も「きょうだい班」で、2年生が1年生をリードして連れて歩きました。毎年こうしたことを続けているので、今は低学年の子もいずれは自分たちがリードする側になるという見通しを持てるようになります。自分たちが年上の子たちに大事にしてもらっているから、自然と小さい子に優しくできるのでしょう。そして優しさだけでなく、リーダーシップも養われます。

自然光をたくさん取り入れられる明るい教室
自然光をたくさん取り入れられる明るい教室

11月には5・6年生がお店を開き、4年生以下がお店をまわって楽しむ「なかよししフェスティバル」があります。そして12月に引継ぎ式があり、6年生から5年生にリーダー役がバトンタッチされるのですが、引継ぎ式後の5年生の意識の変容には目を見張るものがあります。今度は自分たちが最高学年としてみんなを引っ張っていこうという強い気持ちが伝わってきて、頼もしく思えます。

多くの授業でタブレット端末を活躍し、主体的な学びを後押し

——授業の方法や指導について、特に大切にされていることを教えてください。

押田校長先生:子どもたち一人ひとりの考えを少しでも多く拾って、その都度認めてあげることを意識しています。自分なりの考えを認めてもらうことで、子どもたちは自信を持ち、誰かの役に立ったと感じることができます。子どもたちの自己肯定感を高めるため、学習時に限らず掃除や給食などの当番活動や生活の中でも、良いところを見つけて褒めるよう、教職員一丸となって取り組んでいます。

小さなことでも、「この前はできなかったけど、今度はできた。じゃあ次も頑張ってみよう」。そんな風に伝えれば意欲も高まって、きっと次につながると思っています。

音楽室の様子
音楽室の様子

——デジタル図書の活用やタブレット端末の導入について、活用法やメリットなどについて教えてください。

押田校長先生:川崎市では今年度の3月に、図書館でデジタル図書の活用が始まりました。本校は今年度の小学校のモデル校に指定され、他校に先駆けてその貸し出しを利用しています。子どもたちは1人1台持っているギガ端末で図書室にない本を検索し、オンラインで本を借りる手続きを行い、端末で読むことができます。

夏休みには「暑い中図書館まで出かけなくても、たくさん本を読めた」という声もありました。また、デジタル図書の中にはオーディオブックもあり、文字がスムーズに読めない子も、読み聞かせ感覚で本を楽しむことができます。

それに古い絵本だとカラーの絵も色あせてしまいますが、デジタル図書だと美しい発色をそのまま楽しめます。デジタル化されている本の数は限られますが、さまざまなメリットがあると感じています。

タブレット端末を活用した授業風景
タブレット端末を活用した授業風景

押田校長先生:コロナ禍で一気にギガ端末を使った学習が進み、授業で端末を大いに活用しています。課題を端末上で作成してスライド発表したり、資料の配布や収集も瞬時に行えますし、子どもたちの考えも容易にクラス内で共有できるので、考え方が同じ子同士でグループを作って話し合ったりもしています。

体育や音楽の授業でも、マット運動や跳び箱、楽器演奏などを児童が互いに撮り合い、見せ合って、その場ですぐに確認して修正に活かしています。生活科や理科では観察したものを写真に撮っておき後で振り返るなど、子どもたちは上手に学習に役立てていますね。

また、学習アプリを使って自宅学習に活かしている子もいます。学年と科目を選ぶと学習内容の一覧が出てくるため、自分で考えて予習や復習ができます。主体的な学びを後押しする大きなメリットだと思います。

公園も充実し、スポーツ施設や病院にも恵まれた大島エリア

——地域の方々との交流、近隣の保育園・幼稚園・中学校と連携して取り組んでいる活動があればお聞かせください。

押田校長先生:地域には子どもたちを温かく見守ってくださる方が多く、先月2年生が生活科で行った「まち探検」でも、近くの「八幡神社」をはじめ銭湯や郵便局、お米屋さんなど、多くの方々が快く協力してくださいました。また、毎月1日と10日は地域見守りの日になっていて、低学年の下校時間帯に合わせて地域の老人会の方々が通学路に立ってくださっています。

周辺の歴史や自然にふれる学びにおいても、地域の方々にお世話になっています。近くに川崎区発祥の「長十郎梨」を植えている方がいらっしゃり、4年生がお宅の庭にお邪魔して受粉作業をさせていただくこともあります。また、俳優の中本賢さんが主宰する「多摩川クラブ」の方々にご協力いただき、毎年5年生が「ガサガサ体験」をしています。これは、川崎区殿町付近の多摩川河口付近に出かけ、干潟の生き物を観察するものです。多摩川の水質の変化についても学びます。

近隣の「東おおしま保育園」
近隣の「東おおしま保育園」

東おおしま保育園」など近隣の保育園や幼稚園の年長さんとも交流をしています。小学校がどんなところか事前に知ってもらうためですね。この辺りには2つの中学校区がありますが、本校のほとんどの子は「川中島中学校」に進学します。小中学校の教員は互いに学校訪問するなどして毎年情報交換を行っています。

——今後、力を入れて取り組んでいきたい活動はありますか?

押田校長先生:来年度は川崎市が市制100周年を迎え、再来年度は本校が70周年を迎えます。地域に大事にしていただいている学校なので、子どもたちにも学校や自分たちのまちを愛する心を意識させていきたいです。

「川崎市立東大島小学校 」は2025年度に70周年を迎える
「川崎市立東大島小学校 」は2025年度に70周年を迎える

去年は防災教育の推進校だったこともあり、骨折時の肘当てにペットボトルを活用する方法、担架代わりに毛布が使えることなど、子どもたちは非常に多くのことを学びました。子どもが家庭で話せば保護者にも防災知識が伝わり、まわりまわって子どものいないお年寄りにも伝わるかもしれません。子どもにもできることがあるわけです。これからもこの東大島で生活していく子が、地域とともに生き、地域に貢献していくために、自分に何ができるか考えられる子どもにしたいと思います。

——最後に、川崎区大島エリアの魅力をお聞かせください。

押田校長先生:私は川崎区の学校としては本校が初めてなのですが、この辺りは非常に穏やかで落ち着いた地域だと思います。昔ながらの商店も残っていますし、子どもたちが楽しく遊べる公園がたくさんあります。

“ヒコーキ公園”こと「大島第2公園」
“ヒコーキ公園”こと「大島第2公園」

本校の学区内だと「にわとり公園」の愛称で親しまれている「大島第一公園」、飛行機型のジャングルジムがある“ヒコーキ公園”こと「大島第2公園」、「大島第3公園」や「藤崎第4公園」などでしょうか。数が多いだけではありません。町会の方たちが定期的に清掃してくださっているからでしょう、どこもとてもキレイなんですよ。ちょっと離れますが「富士見公園」や「大師公園」など大きな公園も利用できますね。

スポーツ・文化総合センター「カルッツかわさき」
スポーツ・文化総合センター「カルッツかわさき」

 押田校長先生:「川崎」駅までは距離がありますが、比較的多くのバスが出ているので慣れれば不便はないでしょう。スポーツ・文化総合センター「カルッツかわさき」やスタジアム、コンサートホールの「ミューザ川崎」もあります。また、病院や商業施設もありますので、生活しやすい環境だと思います。子どもも大人も嬉しい環境ですね。

川崎市立東大島小学校

押田春美校長先生
所在地 :神奈川県川崎市川崎区大島5-25-1
電話番号:044-233-6120

URL:https://kawasaki-edu.jp/2/713higasiosima/
※この情報は2023(令和5)年11月時点のものです。