スペシャルインタビュー

地域と豊かな交流を持ち、さまざまな“かかわり”を通じた学びを実践する「横浜市立新石川小学校」

「たまプラーザ」駅の南口からほど近く、閑静な住宅街の一角に立つ「横浜市立新石川小学校」。駅から近い立地にありながら、青葉区内で屈指の広さをもつ小学校だ。穏やかな環境に包まれ、地域の人々の温かい支援を受けながら歴史を紡いできた。地元の人々の間では“夏になると花火が上がる小学校”としても親しまれているという。

今回はそんな「横浜市立新石川小学校」の小嶋千里校長先生を訪ね、学校の取り組みや地域との関わりなどについてお話を伺った。

お話をうかがった小嶋千里校長先生
お話をうかがった小嶋千里校長先生

広々とした校庭と中庭のある、恵まれた学びの環境

――まずは、貴校の沿革と現在の学校のご状況について教えてください。

小嶋校長先生:「新石川小学校」は、1988(昭和63)年に創立され、今年で35周年になりますが、もともとは隣にある「横浜市立山内小学校」から人口の増加に伴い分離・新設された学校です。校名はその昔この辺りが「石川村」と呼ばれていたことに由来し、「たまプラーザ」駅の反対側に「横浜市立元石川小学校」もあるのですが、横浜市南区に「横浜市立石川小学校」という学校があったため、「新石川」という名前になったそうです。

青葉区内でも有数の広さを誇る運動場
青葉区内でも有数の広さを誇る運動場

また、駅から近い場所ですが広い敷地が取れているのは、もともとこの敷地が中学校用地だったためです。とくに運動場の面積が広く、青葉区の30以上ある小学校のなかでも広い方だと聞いています。本当にありがたく、素晴らしい環境だなと思っております。

児童数については、周辺地域の住宅の開発に伴って徐々に増えてきており、今年度は655名でスタートしましたが、この先も少しずつ増えていくのかなという印象です。現在は3クラスと4クラスの学年が混在し、横浜市では中規模くらいの人数の学校になります。

「新石川小学校」の校門
「新石川小学校」の校門

――校舎の設備で特徴的な部分がありましたら教えてください。

小嶋校長先生:プールが屋上にあるというのは、35年前の創立当時としては、珍しい学校だったのではないと思います。個人的にはこの校舎の形が美しくて、すごく好きですね。初めて来た時に「すごくきれいなデザインの校舎だな」と感じたことを覚えています。教室棟がコの字になっていて、別棟に職員室や特別教室があって、平凡な四角四面ではないところがいいですね。

この校舎に囲まれた中庭や校庭に、果樹がたくさんあるところも特徴かもしれません。ビワ、サクランボ、梅、桑の実、ヒメリンゴなど、さまざまな果実が収穫できるんですよ。

さまざまな果樹が植えられている中庭の様子
さまざまな果樹が植えられている中庭の様子

コロナ禍で実感した“かかわる”ことの大切さと、近年の新しい学校運営の取り組み

――「新石川小学校」の教育目標について教えてください。

小嶋校長先生:本校の教育目標として、「豊かなかかわりを通して、共に高め合い、主体的に取り組む子」という言葉を掲げています。その中でもやはり、学校はみんなが集まる場所ですから「かかわり」ということを通じて、子どもたちにさまざまな力を育んでもらいたいなと思っています。

最近はコロナ禍で休校やリモート授業の期間もありましたが、また校舎に通学できるようになり、改めて「学校で友達と会って学ぶ」ということの大切さを感じました。そして、その大切さはどういった理由からきているのかということを問い直し、やはり学校は、実際に「する」こと、「見る」こと、「体験する」ことで、いろいろなものを学び取る場所であることなのだと思いました。

創立30周年記念の航空写真
創立30周年記念の航空写真

――教科授業や課外活動を含め、特に力を入れていることや、貴校の特色ある活動あれば教えてください。

小嶋校長先生:ひとつ特徴的なのは同じ学年の担任で教える教科を分担する「教科交換」や音楽や英語など専門の先生が教える「教科担任制」を進めているところです。本校では3年生から、学年内での教科交換、教科担任制を取り入れています。

教科を交換することで、子どもたちはいろいろな大人と触れ合えますし、同時に、教員の子どもに対する理解が進みます。特に、現在本校は若い教員も多い学校なので、教員が一人で1クラスをずっと見るよりも、学年の中で情報交換をしながら見ていくほうが、教員としての技術も磨かれます。

児童たちの作品が飾られた廊下
児童たちの作品が飾られた廊下

また若い教員が多いということは、文部科学省の取り組みである「GIGAスクール構想」にもプラスに働いていると思っています。本校では昨年6月に、約700台の「iPad」が届き、この初期設定を早くに終え、6月中には“GIGA開き”ができました。若い先生方が多いからこそ、情報端末の活用に関しては、積極的に取り組んでこられたと思っています。

日常を飛び出し、子どもたちのさまざまな体験が叶う課外学習

――学校行事に関して、特徴的なものがあれば教えてください。

小嶋校長先生:5年生が山梨県の道志村で行う、本格的な林業体験は特徴的なものの1つですね。森に入って間伐をさせていただくのですが、インストラクターの方に教わりながら樹齢25年から30年程の木にくさびを入れて、ロープを引っ張って、自分たちの力で倒します。

山の中に「ピー!」と大きな警告の笛が鳴り、メキメキメキメキと木が音をたて、最後にはドーンッと凄い衝撃なのですが、これがすごくインパクトがあり子どもたちの五感にも響いていると思います。森林資源に関する環境課題についても、やはり実際に体験することで理解や考察も深まると思います。

このほかにも、4年生は「愛川宿泊体験学習」として神奈川県の愛川に出かけ、藍染めやキャンドルファイヤーを行ったり、6年生の修学旅行では栃木県の日光に行ったりと、学年ごとの宿泊行事は子どもたちもとても楽しみにしています。

宿泊体験学習での様子
宿泊体験学習での様子

――海外の学校との交流も行っているそうですね。

小嶋校長先生:オーストラリアにある姉妹校「ウィリアムズタウンノース小学校」と、手紙のやりとりなどを通して交流を行っています。最近ではGIGAの導入で環境も変わったため、さらに一歩進んでミーティングソフトの「Zoom」を使った交流などもスタートしています。

これまで子どもたちにとっては、顔を見たことがない相手にメッセージを書くという、実感が湧きづらい部分もあったかと思います。それが映像を通して交流できるようになり、「あ、この子たちと繋がっていたんだな」と理解でき、子どもたちの目の輝きも変わったと思っています。こういった点もICTの有効活用の形のひとつだなと感じますね。

また、たまプラーザエリアの地域柄、英語の上手な子どもたちも多く、英語圏に興味をもっている子も多いですから、こうしたやり取りは今後も積極的に進めていきたいと考えています。

農業体験やお祭り、小中連携など地域との交流も活発

富士山をイメージした校章
富士山をイメージした校章

――地域の人々との連携や交流のある取り組みがありましたら、教えてください。

小嶋校長先生:ありがたいことに、本校は地域との関わりがすごく活発な学校です。ひとつは「農業体験」です。学校の近くに畑をお持ちの方が子どもたちに枝豆の収穫の体験をさせてくださったり、2年生の生活科で野菜を育てる際にも、地域の方のところに足を運び、自分で選んだ苗を買って、それを育てたりという形で行っています。

さらに、地域の伝統行事「どんど焼き(お正月に飾った門松やしめ飾りなどの縁起物を燃やし、地域の人々の災いを払う風習)」にも力を入れて、継続してくださっています。この2年は中止されていますが、校舎の2階3階にも届くような大きなやぐらを準備してくださり、それを校庭で焚き上げているそうです。その炎もすごく高くまで上がり、素晴らしい体験となっています。こうした体験が「たまプラーザ」駅から5分程の学校でできるわけですから、本当に地域の方のおかげだなと思っています。

花火が打ち上げられる広い校庭
花火が打ち上げられる広い校庭

もうひとつ、夏に「夕涼み会」という大きな地域行事があり、私が着任してからは2年連続で中止になってしまって、まだ実際に見たことは無いのですが、これも非常に盛り上がるお祭りだと聞いています。特に皆さんが口を揃えておっしゃるのが「花火がすごい」ということで、地域の方がわざわざ花火師の資格を取って、この校庭から花火を上げてくださっているそうなんです。

――近隣の施設などが、学校の授業や課外活動に関わることはありますか?

小嶋校長先生:学校のすぐ近くにある「國學院大学」の卒業生に、人間国宝で狂言師の山本東次郎さんという方がいらして、大学主催でその方の狂言の舞台が定期的に行われているのですが、その時に本校の6年生を招待いただいたり、留学生の方と交流したりしています。

明るく解放感のある図書室の様子
明るく解放感のある図書室の様子

――「小中連携」については、どのような取り組みをされていますか?

小嶋校長先生:本校は「横浜市立山内中学校」の中学校区で、本校を含む小学校4校に対して、中学校がひとつというブロックになります。5つの学校の教員が集まり「小中の9年間でこんな子たちを育てていこう」という「子ども像」を共有し会議を開催したり、合同の授業研究会を行ったり、専門の講師の方をお招きして研修会を行ったりしています。

子どもたちについても、先ほどの「夕涼み会」に中学校の吹奏楽部を招いて演奏してもらうなどの交流があります。ほかにも、「山内中学校」の生徒会が本校に来て中学校の様子を教えてくれたり、逆に本校の子どもが中学校に行って部活動体験をさせてもらったりという取り組みもしています。

安全対策に集団登校を実施、地域の見守りも

――安心・安全に対する取り組み、防犯に関する取り組みについて教えてください。

小嶋校長先生:ひとつ特徴的なのは、集団登校です。同じ小学校の子どもたち、近くに住む子どもたちがお互いに知っているということは、すごく大きな「安心感」につながりますので、本校では基本的に集団登校を行っています。さらに集団登校の中で、学年の上下の交流が生まれ、上級生のお兄さんお姉さんに優しくされたことを下級生の子どもたちはよく覚えていて、上の学年になった時に、同じように下の学年の子に気遣えるようになるんです。集団登校にはそういったメリットもあると思っています。

もちろん地域の方、PTAの方々も通学路の安全を見守ってくださったり、何か危険な箇所があればすぐに学校に知らせてくださったりと、子どもたちに対して、常に気を配っていただいていると思います。

子どもたちにやさしく、学びの場も豊かなたまプラーザエリア

――最後に、たまプラーザエリアの魅力について教えてください。

小嶋校長先生:赴任してこの場所に来てまず最初にびっくりしたのは、「たまプラーザ」駅ですね。デザインも素敵で開放的で、「ここは小さな空港かな?」と思ったほどです。駅周辺は買い物にもとても便利な街だと思います。

便利な駅周辺から少し離れると、子育てにもやさしい穏やかな環境が広がる
便利な駅周辺から少し離れると、子育てにもやさしい穏やかな環境が広がる

そして、本校はそんな「たまプラーザ」駅から徒歩で5分、大小さまざまな公園があったり、歩道も広かったりと、すごく子どもたちにも優しい地域だと感じます。

商店街も素敵ですよね。こんなに便利な街で、新しいお店もたくさんあるのに、商店街もまだいきいきとしている。本校の社会科の勉強の中でうかがったりもできますし、学習材にもこと欠かない豊かな地域だなと思います。落ち着いている方が多く、教育に対しても熱心で、お子さんに対する思いが深くて。子どもに寄り添って、困ったことがあれば一緒になって考えてくれる、そんな大人が多い街なのではないかと思っています。

横浜市立新石川小学校 小嶋千里校長先生
横浜市立新石川小学校 小嶋千里校長先生

横浜市立新石川小学校

小嶋千里 校長先生
所在地:横浜市青葉区新石川3-12-1
電話番号:045-911-6281
URL:http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/shinishikawa/
※この情報は2022(令和4)年6月時点のものです。