アルテリッカしんゆり実行委員会事務局 インタビュー

新百合ヶ丘の街だからこそ育まれた、地域の総合芸術祭「アルテリッカしんゆり」

新百合ヶ丘の街で、2009(平成21)年から始まった総合芸術祭「アルテリッカしんゆり」。回を重ねるごとに認知度を高め、2018(平成30)年に開催した回では来場者が20,000人を超える人気ぶりとなった。「アルテリッカしんゆり」の最大の特徴は、音楽、演劇、伝統文化など、様々なジャンルの芸術にふれることができる“総合芸術祭”であること。その実現の背景には、小田急線「新百合ヶ丘」駅の利便性向上により多くの人々が街に移り住んでいること、文化施設に恵まれていることに加え、各分野の芸術家が新百合ヶ丘の街を生活拠点としていることなどが理由として挙げられる。今回は、「アルテリッカしんゆり」の広報を担当している小山さんに、芸術祭の魅力や地域の方々との連携についてお話を伺った。

アルテリッカしんゆり実行委員会事務局の小山さん
アルテリッカしんゆり実行委員会事務局の小山さん

街の多彩な芸術資源と地域の人々とのつながりを活かして成り立つ芸術祭

――「アルテリッカしんゆり」は2009(平成21)年にスタートしたそうですね。まずは、その経緯をご紹介いただけますでしょうか。

もともとこの街には「劇団民藝」の拠点があることに加え、「日本映画大学」の存在、2007(平成19)年には「昭和音楽大学」の移転、さらには「川崎市アートセンター」が完成するなど、芸術を育むのに十分に豊かな土壌がありました。その上で、能狂言の分野にお知り合いの多い詩人・馬場あき子先生に、この街だからこそできることがあるのではないかと力を貸していただき、「アルテリッカしんゆり」が始まることになったのです。

「川崎アートセンター」
「川崎アートセンター」

――ちなみに、“アルテリッカ”とはどういう意味なのでしょうか?

“アルテリッカ”については、「川崎・しんゆり芸術祭」という正式名称に、親しみやすい愛称を付けたらどうかという提案が発端でした。様々な案が出される中で、イタリア語で芸術という意味のアルテ、恵まれている・豊かという意味のリッカをつなげて“アルテリッカ”はどうだろうと。もちろん造語なので、イタリア人には伝わりませんが…(笑)。しかし、この呼び名が付いたことでより多くの人々に覚えていただきやすくなり、足を運んでいただくきっかけにもなっているのかなと。

――そういった意味が込められていたんですね。実行委員会事務局については、どのような方々が主体となっているのですか?

団体組織がメインで、「川崎市文化財団」、「麻生区役所」、「しんゆり・芸術のまちづくり」、「ボーイスカウト」、「ガールスカウト」、「昭和音楽大学」などです。個人としては、ボランティアの方々が現場で重要な役割を担ってくれています。当初のボランティアは8人でしたが、回を重ねるごとに参加者が増え、現在では200人を超えるまでになりました。当初はボランティアといっても、関係者とその周辺の人々がメインだったのですが、今では“公演を見て手伝いたくなった”“募集があるのを知って来た”というケースも増えており、うれしい限りです。

現在では多くの人々がボランティアに参加してくれるようになった
現在では多くの人々がボランティアに参加してくれるようになった

ボランティアさんによる実際の活動の様子
ボランティアさんによる実際の活動の様子

――実際にボランティアで参加された方からの反応・感想はいかがでしょうか。

ボランティアの方の中に、新百合ヶ丘の街に引っ越してきてから数年経ったが、地域の人々とのつながりが実感しにくいという悩みを抱えていらっしゃる方がいました。この街は新しく、移り住まれる方が多いという実情が背景にあるのかもしれません。しかしボランティアスタッフとして活動する中で、地域の中に友達ができたり、街について詳しく知ったりして、街に住むことに対する充実感が得られたといううれしい声が聞こえています。「アルテリッカしんゆり」は芸術祭ですが、そういった、「地域とのつながり」という観点でも非常に意義のある取り組みだと感じています。

ボランティア活動が地域の人々とつながるきっかけになることも
ボランティア活動が地域の人々とつながるきっかけになることも

クラシックや演劇、伝統芸能など、総合芸術祭ならではの魅力が満載!

――「アルテリッカしんゆり」の見所を教えてください。

もちろん全て、と言いたいところですが(笑)、2019(平成31)年の「アルテリッカしんゆり」で注目を集めたものとしては「テアトロ・ジーリオ・ショウワ」でのオペラ「蝶々夫人」ですね。伝統芸能の分野では、2人の人間国宝による競演「友枝昭世と山本東次郎の至芸」が注目で、これは、冒頭でお名前を挙げた馬場あき子先生の存在なくしては実現できませんでした。また、「スターダンサーズ・バレエ団」による「シンデレラ」、「ミューザ川崎シンフォニーホール」を本拠地とする「東京交響楽団」の公演もあり、ユニークなものとしては、ジャズと日本の伝統楽器が融合した「Jazz Japonesque(ジャズ・ジャポネスク)」、谷川俊太郎先生の朗読に音楽をつけた「詩と音楽のコンサート」などがあります。

――オペラに伝統芸術、ジャズと伝統楽器、など、実にバリエーション豊かなプログラムなんですね!子ども向けのプログラムなどもあるのですか?

そうですね。プログラム・コンサートのなかには0歳児から参加できるものもあります。子どもにこそ本物のクラシック音楽を聞かせたいという考えが根底にありますね。また、腹話術・太神楽・発泡スチロール工作芸などを子どもたちが楽しみながら体験できる「こども寄席」と呼ばれるプログラムもあります。このプログラムでは、市内の小学校を代表した児童が、前座で落語を披露してくれました。

「アルテリッカしんゆり2020」の公演スケジュール
「アルテリッカしんゆり2020」の公演スケジュール

例年ゴールデンウィークに実施している「アルテリッカしんゆり」ですが、2020(令和2)年は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点より、延期・一部中止と言う形で実施することになりました。
お客様にはマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保などにご協力いただきつつ、主催者側も、消毒液の設置、飛沫防止用のビニールシートの設置、定期的な換気、スタッフ・出演者全員の検温などの感染症予防対策を徹底し、安心して参加いただけるよう取り組んでまいります(実施については状況により変更の可能性があります。最新の情報は公式HPにてご確認ください)。

「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、2017(平成29)年 藤原歌劇団公演「カルメン」
「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、2017(平成29)年 藤原歌劇団公演「カルメン」

「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、「トリオ・リベルタ コンサート」
「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、「トリオ・リベルタ コンサート」

「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、ベイビーシアタープロジェクト「KUUKI」
「アルテリッカしんゆり2020」で公演予定、ベイビーシアタープロジェクト「KUUKI」

――これまで出演された方からの感想などはいかがでしょうか?

ボランティアの数や、熱意のある姿勢などを見て、驚かれる出演者の方は多いですね。出演者の大半はプロとして活動していますから、これまで多くの舞台・コンサートを経験されています。そのようなシーンとは異なる、新百合ヶ丘ならではの雰囲気と温かさを、「アルテリッカしんゆり」を通して感じていただいているようです。

芸術祭への親しみやすさを高める目的で関連イベントも実施されている。写真は「音もdeアルテリッカ」の様子
芸術祭への親しみやすさを高める目的で関連イベントも実施されている。写真は「音もdeアルテリッカ」の様子

――これからの「アルテリッカしんゆり」についてお聞かせください。

「アルテリッカしんゆり」の大きな特徴は、やはり“総合芸術祭”という点です。せっかく、クラシック音楽、演劇、映画、伝統芸能といった、普段はあまり交わることのない様々な要素が含まれているので、それらが各々に刺激し合いながらレベルを高め、やがては世界中に向けて発信し、世界的に知られるイベントにできたらなと思います。また、継続性を意識し、世代交代によって継承される形ではなく、誰もが参加でき、個人個人に合った関わり方ができる芸術祭にしていきたいという思いがありますね。

小山さん
小山さん

――最後になりますが、小山さんの感じる新百合ヶ丘エリアの魅力について教えてください。

バラエティに富んだ飲食店が多いことに加え、「新百合ヶ丘」駅周辺には大型のショッピングもあるので買い物も身近で楽しめるのは大きなポイントだと思います。交通アクセスの利便性にも優れていながら、閑静な住宅街が広がり、適度に緑が残されている点も気に入っています。それとやはり、芸術活動が盛んな街という点は外すことのできない大きな魅力ですね。

小山さん
小山さん

川崎・しんゆり芸術祭実行委員会事務局

広報担当 小山さん
所在地:川崎市麻生区万福寺1-12-1 クロスアベニューII 8F
URL:https://www.artericca-shinyuri.com/
※この情報は2019(平成31)年3月に取材した記事を2020(令和2)年7月に再構成したものです。