60年以上受け継がれる伝統が子どもたちを輝かせる「横浜市立大綱中学校」
東急東横線「大倉山」駅から徒歩7分。「横浜市立大綱中学校」は、生徒数900名を超える大規模校だ。同校に来る3年前までは教育委員会に勤務していたという後藤秀吉校長先生に、学校の取り組みや子どもたちの特長、大倉山エリアについてお話を聞いた。
何事にも全力で取り組み、頑張ることを恥ずかしがらない
――横浜市立大綱中学校は70年以上の歴史ある学校とお聞きしました。学校の概要と歴史について教えてください。
後藤校長先生:1949(昭和24)年創立で、今年で76年目を迎えます。この地はかつて大綱村といったので、歴史をとどめておくために村名を冠したそうです。当初は木造校舎で、今のグラウンド側にありました。現在の新校舎を建ててから古い建物を取り壊したようです。近隣では「菊名小学校」の建て替え工事が始まっていますが、6年かかると聞いています。新校舎建設の間、子どもたちはグラウンドに建てたプレハブの仮校舎に通うようです。
現在は各学年8クラスに個別支援学級が3クラスあり、計27クラス938名の大所帯です。過去には生徒数が減った時期もありましたが近年また増えてきて、多くのクラスが40人学級です。今年の一般級の1年生は入学当時320人でしたので、あと1人でもいたら9クラスになっていました。昭和の時代には最大2,000人の生徒がいたそうなので、おそらく教室に50人ぐらい入れていたのでしょう。
――貴校の教育目標や方針、また特に力を入れて取り組んでいる学校運営・教育活動などを教えてください。
後藤校長先生:本校の教育目標は、「共に学び、自他を大切にし、たくましい、心豊かな人を育てます」です。それとは別に生徒会信条という子どもたちの目標があり、それは「ひとりのためにみんなが、みんなのためにひとりが努力しよう」というものです。学校教育目標はこの生徒会信条と並行するよう考えられていて、私たちは両方に取り組んでいます。ちなみに生徒会信条は、生徒数が一番多かった1962(昭和37)年にできたと聞いています。
そして本校には、恥ずかしがらずどんなことにも精一杯努力し、頑張る人を認めるという素晴らしい伝統があり、生徒たちは文武両道を目指しています。これは学校教育目標と生徒会信条に則って最も大事にしていることで、私も事あるごとに「真剣であること、一生懸命取り組む伝統はしっかり引き継いでいこう」と子どもたちに話しています。中学生ぐらいの年頃だと、頑張ることを恥ずかしがって変に恰好をつけていい加減にふるまいがちですよね。でも本校の子どもたちは違います。体育祭にいらっしゃる来賓の方々はみなさん、本校の子どもたちが競技にも応援にも全力で取り組む姿に驚かれます。
市大会4連覇のサッカー部や全国大会を目指す合唱部など、部活動が盛ん
――ICT教育にも力を入れられているようですね。近年の新しい教育活動やそれによる変化などがあれば教えてください。
後藤校長先生:コロナ禍で1人1台端末が急速に進み、横浜市の中学校にはGoogleのChromebookが配布されました。3年前に本校に赴任したとき、先生方が積極的に端末を活用していて驚きました。デジタルが得意な先生に他の先生方も引っ張られているようです。現在はほとんど板書を見かけなくなりました。1人1台端末の良いところは、生徒たちが自分の考えをリアルタイムで発信でき、分からないことをすぐに調べられることです。体育の授業でも、ダンスや機械体操で自分の演技を撮影して確認し、改善につなげるなど効果的に活用しています。美術や技術・家庭科の授業でも使っています。ただ、自分で考えて調べ、学びを深めるのには有効ですが、グループ学習だと理解できていないのに分かったふりをすることもあるので、教師が察知してフォローする必要があります。今後も引き続き、学習指導部がリードしてICTを活用した授業改善を推し進めていきます。
――小中一貫教育の状況について詳しく教えてください。
後藤校長先生:本校の学区内には4つの小学校があるので、5校での連携を大事にしています。小学校と中学校では教科ごとに先生が変わるなど大きな違いがあるので、入学してから子どもたちが戸惑わないよう、小学生に授業を見学してもらう機会を年2回ほど設けています。他にも地域に学校活動を公開するオープンスクールも実施しているので、入学前に中学校の雰囲気を知ってもらえると思います。子どもたちだけでなく、小中学校の教員も互いの授業を見学し、どんな風に授業を進めているか確認し合っています。中学校の教員の中には現在の小学校の状況を知らない人もいるので、教員同士の授業見学も大事にしています。
――部活動は数が多く充実していますね。生徒さんも多いようですが、人気の部活やユニークな部活はありますか?
後藤校長先生:運動部が11、文化部が7で、計18クラブあります。充実感を得たり、自己肯定感を育んだりできているのでしょう。子どもたちは部活が大好きです。サッカー部は今年の夏、市大会4連覇を果たしました。人気の部ですが今の3年生だけ人数が少なく、さすがに今年は難しいだろうと思っていましたが、1・2年生含めみんなが頑張った結果です。陸上部には昨年四種競技で全国優勝した子がいますし、美術部は港北区の選挙啓発のための「明るい選挙メッセージカードコンテスト」の中学生の部で金賞、銀賞を独占しました。そして、ここ3年間で急に力をつけてきたのが合唱部です。昨年度は全国大会に出場し、今年度も大会に出るたびに優秀賞を獲得していて、10月に大宮で開かれる全国大会にも出場予定です。吹奏楽部も毎年良い成績を残していますし、茶華道部も外部から先生が指導に来てくださっています。どの部活も頑張っていて、保護者も協力的です。
地域住民の郷土愛に支えられた、人と自然が調和する大倉山エリア
――学校の周辺はどんな地域でしょうか。地域住民の方との関わり・交流などもありましたら教えてください。
後藤校長先生:近隣には本校の卒業生が多くお住まいで、みなさん母校を応援する気持ちや郷土愛が強いです。同窓会を運営する組織も熱心で、町全体で大綱中学校を大切にしていると感じます。学校としては非常にありがたい環境で、生徒が地域の人と交流する活動をいろいろやっていましたが、コロナ禍に多くを取りやめて復活していません。行事も縮小傾向にあり、1日かけてやっていた体育祭も午前中開催になり、大綱の舞という3年生の女子が披露する伝統の演技までなくなってしまいました。そんなわけで地域の方と交流する機会は少ないのですが、「港北区地域子育て支援拠点どろっぷ」でのふれあい体験は7~8年続いています。2年生の家庭科の授業の一環で、クラスごとに訪問して幼児とふれあうというものです。兄弟姉妹のいない生徒も多いですし、子育て家庭と接する貴重な機会になっています。おっかなびっくり赤ちゃんを抱っこさせてもらい、お母さんたちともお話しして、きっと自分の親に対して思うこともあるでしょう。職員の方たちには、幼い我が子が成長した姿をイメージできるのでお母さんたちにとっても良い機会になると言っていただき、ありがたい限りです。本校から歩いて5分足らずで行けるところなので、これからもこの取り組みは続けていきたいです。
――周辺の住環境・子育て教育環境の魅力をお聞かせください。おすすめスポットや風景などもあれば教えてください。
後藤校長先生:「大倉山」駅からは横浜、渋谷に出やすいですし、「新横浜」駅にも歩いて行けるのも便利です。「港北区役所」や「横浜市港北公会堂」なども近く、住環境は非常にいいと思います。大倉山というのはひとつのブランドなのかなと思います。地域住民の多くがこの地に住んでいることを誇らしく思うのも分かります。
本校に赴任して私が真っ先に素敵だなと思ったのは、「エルム通り商店街」です。白を基調にしたギリシャ風建築の建物がおしゃれですよね。駅の西側には「レモンロード商店街」があり、駅を挟んで異なる2つの商店街が続いているのもいいなと思います。「太尾神社」や「菊名神社」の盛大なお祭りも風情があって好きです。「太尾神社」のお祭りでは、神社近くのスーパー「ライフ」の駐車場にお御輿が十数基も集まって壮観ですよ。由緒ある神社なのでしょうね。
私の一番のおすすめスポットは、山の上にある「大倉山公園」です。記念館も立派ですし、何より2月の梅林が見事です。だからだと思いますが、商店街には梅の最中や梅酒など梅を使った商品が多い気がします。梅まつりでは梅林の特設ステージで本校の合唱部も発表しますが、それとは関係なく毎年足を運んでいます。梅の香りがただよう中をゆっくり歩いて、途中で休んでお酒を飲んだりして、梅まつりを満喫しています。居酒屋もいいところがいっぱいありますよ。大倉山は、人の営みと豊かな自然が調和したまちだと思います。

横浜市立大綱中学校
校長 後藤秀吉先生
所在地:神奈川県横浜市港北区大倉山3-40-1
電話番号:045-542-4422
FAX:045-541-3440
URL:https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/jhs/ohtsuna/
※この情報は2024(令和6)年8月時点のものです。