選ばれる街、住み続けられる街を目指して。地域と連携し街の魅力を発信する川崎市中原区
再開発により整備された利便性の高い街として知られる「武蔵小杉」駅周辺エリア。駅から少し足を延ばせば「二ヶ領用水」や「等々力緑地」といった四季折々の自然に触れられる環境にも恵まれ、利便性と生活の豊かさを享受できる場所として注目を集めている。2022(令和4)年4月に区が誕生して50周年を迎える川崎市中原区では、魅力ある区づくりに向けてさまざまな取り組みが進められている。
今回は川崎市中原区役所を訪ね、中原区の魅力また「武蔵小杉」駅周辺の生活の実際についてお話を伺った。
7区ある川崎市の行政区の中で最も人口の多い中原区
―まず中原区の概要について教えてください。
中尾さん 中原区は川崎市のほぼ中央に位置しておりまして、川崎市が政令指定都市に移行した1972(昭和47)年に誕生しました。都心へのアクセスのしやすさと「等々力緑地」など自然にも恵まれた環境で、近年は「武蔵小杉」駅周辺の再開発と相まって移り住む人も多く、7区ある川崎市の行政区の中で最も人口が多いことで知られています。
深谷さん 来年度、2022(令和4)年4月には中原区が誕生して50周年を迎えます。ただいま記念事業の検討を進めているところで、中原区の魅力を区民の皆さまにお伝えするとともに、節目となる年を一緒にお祝いできるようなイベントにしたいと思っています。
都市のイメージだけではなく歴史や文化、自然などさまざまな魅力をもつ中原区
―中原区の魅力についてお聞かせください。「なかはらの魅力発信講座」という取り組みもあるそうですが?
太田さん 中原区役所のある「武蔵小杉」駅周辺をご覧いただくと、タワーマンションや大型商業施設が集積した、いわゆる都市のイメージがあるかと思いますが、私たち地域振興課で所管している「歴史と緑の散策マップ」にもあるように、中原区にはいろんな顔があるのが魅力だと思います。
この「歴史と緑の散策マップ」は市民のボランティア団体との協働事業で制作しておりまして、2006(平成18)年度の発行から改訂、増刷を重ね今年で15年目を迎えます。「歴史の道探訪 中原街道コース」や「水辺と緑の散策 二ヶ領用水、渋川コース」、「多摩川散策と等々力緑地コース」など、中原区の歴史や文化、自然などテーマに沿って6つの散策コースが紹介されています。
また、このマップを活用して中原区の魅力について学べるのが「なかはらの魅力発信講座」です。まち歩きや座学の市民向け講座を定期的に開催しております。現在は新型コロナの影響により回数を減らしたり人数を制限したりして実施しておりますが、以前は各回30~40名もの参加者がいました。
参加いただいた方からは「講座を通じてはじめてこういう魅力があるのを知った」という声もいただいており、例えば「武蔵新城」駅をスタートして井田山緑地へと向かうコースにある「江川せせらぎ遊歩道」や「川崎七福神」として親しまれている七福神を祀った寺院もありますし、住宅街の中にある「京濱伏見稲荷神社」には印象的な狐の彫像があったりと見所も多くあります。
充実した子育て支援施策と地域が主体となって取り組む子育て支援の実際
―子育て世代に人気の街としても知られていますが、子育てをするうえでの魅力や子育て支援の実際はいかがでしょうか?
藤原さん 川崎市は人口に占める子育て世代が多いということもあり、子育て支援に力を入れています。「かわさきし子育てガイドブック」や2021(令和3)年3月にリニューアルした「新かわさき子育てアプリ」など子育てに関する情報の提供も充実していますし、中原区には市内で2カ所目となる「保育・子育て総合支援センター」が新しく開設(2021(令和3)年3月)され、保育所と地域子育て支援センターの2つの機能を備えた施設として一体型の支援が行われています。
田中さん 場所はJR「武蔵小杉」駅の北側「日本医科大学武蔵小杉病院」より多摩川方面で、中原区役所から歩いて15分ほどの場所にあります。
藤原さん 「地域子育て支援センター」は0歳から小学校就学前のお子さんとその保護者を対象にした施設で、親子で一緒に遊べるスペースを提供したり子育てに関する講座を開催したりして子育て世帯の交流の場として利用いただいています。また専任のスタッフもおりますので、子育てに関する不安や悩みごとなど相談ができるのもこの施設の特徴です。区内には8カ所の「地域子育て支援センター」があり、近くには「新丸子」駅から徒歩2分の「新丸子こども文化センター」内にもございます。
また中原区では「子育てサロン」を重視しておりまして、地域の方が主体となって子育て支援に取り組んでいます。
「子育てサロン」は地域の社会福祉協議会や民生委員、児童委員、ボランティアの方が中心となって運営されており、お子さんとその保護者を対象にして親子遊びや季節の行事等が行われています。開催日によっては保健師や保育士による育児のアドバイスも受けられますし、同じく子育てをしている保護者の方と情報交換をしたり、友だちづくりの場としてもご利用いただいています。
等々力緑地の近くでは「中原中学校」の一画をお借りして「子育てサロンこすぎ」が行われています。乳幼児のお子さまとその保護者を対象にしたサロンで、コロナ前の話にはなりますが中原中の生徒さんたちが小さなお子さんたちと触れ合う機会などもあり、地域と一体になって子育て支援を行っているのが特徴かと思います。
また子育てにおける地域との繋がりという点では、「なかはら子ども未来フェスタWEEK 2021」(2021(令和3)年11月30日~12月5日)を「グランツリー 武蔵小杉」で実施しました。
日頃から区内で子ども・子育て関連の活動を行っている方たちが担い手となって運営している取り組みで、グランツリー様としても地域の子育てを応援したいということで共感をいただき、実行委員会・グランツリー・中原区役所が連携して実現した取り組みです。
利便性だけではない街の魅力を発信していくことが必要
―中原区のなかでも「武蔵小杉」駅周辺は再開発によって魅力を高めてきた街という印象がありますが、今後注目すべき点があればお聞かせいただけますでしょうか。
深谷さん このあたりは川崎市のほぼ中央に位置していて都心や横浜へもアクセスが良く、比較的落ち着いたイメージだったので生活するエリアとしては以前から人気があったように思います。
再開発によって「武蔵小杉」駅周辺にタワーマンションや大型の商業施設ができると駅周辺ですべてを充足させられるような利便性の高いまちづくりが進められ“コンパクトシティ”と呼ばれるようになっていますが、現在はコロナ禍の影響もあって住む街の選び方そのものが変わって来ているように感じます。
コロナ禍の人の動きを統計で見ると日中の滞在人口が増えているというデータもあります。企業のテレワークや在宅勤務の導入もその一つの要因かと思いますが、選ばれてなおかつ住み続けていただくためには利便性だけではないこの街の魅力を発信していくことが必要だと考えています。
藤原さん 生活環境という点では駅前の再開発に目が行きがちですけど、このあたりには人情味あふれる商店街もあって共存しているところが魅力だと思います。
田中さん そうですね。駅前に大型の商業施設ができたのはもちろん便利ですが、街中に目を向けると商店がかなり充実しています。個人経営だけどすごく質の高いものやサービスを提供している事業者が多いことも魅力です。
オンラインを活用して地域の方とつながる新しいイベントの取り組み
―地域の方との交流の場やイベント開催の予定などがあればお聞かせください。
深谷さん 中原区は川崎市の中心で利便性が高いということもありまして、いろいろな公共施設が集積しています。例えば「川崎市国際交流センター」や「川崎市生涯学習プラザ」、「かわさき市民活動センター」といった市の施設があります。また2020(令和2)年8月には「コスギ サード アヴェニュー」に「川崎市総合自治会館」が移転してきました。
さらに「こども文化センター(児童館)」や高齢者を対象にした「いこいの家」といった施設も各地域にあり、一年を通じてさまざまなイベントが企画・開催されています。
現在はコロナ禍の影響によりイベントの開催を中止あるいは延期にしたり、人数制限など運営方法を工夫しながら実施を検討しておりますが、オンラインを活用したイベントなどは今後行政が支援していかなければいけない取り組みのひとつかなと感じています。
藤原さん 例えば高齢者向けの健康体操があります。中原区の区の花にちなんだ「なかはらパンジー体操」というご当地体操で、地域の皆さんとオンラインでつないでやっていこうといった新しい動きがあります。地域や社会のニーズに合わせたイベント開催のあり方というのを少しずつ考えながらやっていこうと思います。
また「なかはら子ども未来フェスタWEEK 2021」のように駅前の大型商業施設にご協力をいただいて、これまで庁舎でやっていたようなイベントや啓発活動などを行わせていただいたり、今年の10月には東急東横線「武蔵小杉」駅の駅前に「こすぎコアパーク」という公園もできまして、今後いろいろな地域の活動にも活用いただけるようになるのかなと思っています。
多彩な魅力あふれる中原区。地元ゆかりのスポーツチームが設立した新スポットにも注目
―最後に中原区のおすすめスポットを教えてください。また今後、移り住む方へメッセージがあればお願いいたします。
太田さん 「歴史と緑の散策マップ」の表紙にもなっているんですけど、「二ヶ領用水」沿いの桜はとても綺麗です。駅から少し足を延ばすだけで自然に触れられるという点で用水沿いがおすすめです。鴨が泳いでいるのを見かけることもあるんですよ。
中尾さん 私は「等々力緑地」が好きで、行くたびに違う表情を見せてくれます。春は桜が一面に咲いていて、紅葉の季節も美しいですし、自然に触れられるのがとても素晴らしいなと。
田中さん 私は人材に恵まれているなと感じます。「こすぎの大学」さんやコワーキングスペースをやっている「新城WORK」さんのように地域ごとにいろいろな活動をされている方がいらっしゃるんです。
街を愛する気持ちがあるからこそいろいろな活動にも参加してくださるし、思いがあるからこそ人に伝わるんだろうなと。中原区に活気があるのはそういう方たちのおかげなんじゃないかなと思っています。
藤原さん 個人的には「中原図書館」が好きです。駅前の複合ビルにあり、ご年配の方も多く利用されています。実は駅前の再開発によってバリアフリーの環境が整っているので、そういった点でもご年配の方に多く利用されているんだと思います。
あと古くから住んでいらっしゃる方が本当にあたたかい方が多くて、子育てサロンの様子などを見ていると転入してまだ間もない小さなお子さまを連れたお母さんたちに「私たちは30年住んでるのよ」といった話から始まり、「地域のお祭りにぜひきてね」とか、地域に愛着を持っていただけるような話もしてくれるので、いつも有り難いなと思っています。
深谷さん 子育てに関する話題だと川崎市には「こんにちは赤ちゃん訪問」といって、地域のボランティアの方が生後間もない赤ちゃんのいるご家庭を訪問するといった事業があります。
中原区のタワーマンションに転入して来るご夫婦の中には、実家から遠く離れて近くにお友達もいないような状況で、子どもが生まれるとお母さんが自宅でひとりポツンと孤立してしまうケースも耳にします。こういう取り組みを通じて地域の方とちょっとした接点ができるのは新しく移り住む方にとって大変心強いことではないかと思います。
田中さん 先日、地域の方とお話ししていた時に「中原区の人って懐が深いよね」といった話がありました。その方は地方から移り住んで長年いらっしゃる方なんですけど、そういうお話からも魅力のある街だなと思います。
私のおすすめスポットは、「武蔵小杉東急スクエア」の4階に電車の見える展望デッキがありまして電車好きにはたまらないと思います。それと中原区役所の5階にも南武線の見える場所があり、天気が良ければ富士山もものすごく綺麗に見えるんですよ。区役所にお立ち寄りの際はぜひ。
太田さん おすすめの場所をもうひとつ。最近のホットな話題なんですが、プロバスケットボールチームの「川崎ブレイブサンダース」が、東急東横線の高架下に、子どもたちが安心して過ごせる居場所として、バスケットボールステーション「ザ・ライトハウス」をオープンしました。バスケットボールコートのほか、グッズの販売コーナーやバスケットボールに関連する漫画本を設置したコーナーなどもあり、新しい試みなのでぜひ立ち寄っていただければと思います。
深谷さん スポーツの話題で言えば、2年連続4回目の優勝を果たした「川崎フロンターレ」のホームスタジアム「等々力陸上競技場」が中原区にあります。また老朽化によって2016(平成28)年から改築工事をしていた野球場も県内最大の「等々力球場」として2020(令和2)年10月に新たに生まれ変わりました。
藤原さん 女子バレーボールチームの「NECレッドロケッツ」も強豪ですよね。
田中さん 社会人女子バスケットボールチームの「富士通レッドウェーブ」も川崎市が拠点です。オリンピックに3名の選手が選出され注目を集めましたね。
街中を歩くと案内サインなどにスポーツパートナーとして連携しているチームや選手とコラボしたデザインがあったりして、地域のみんなで盛り上げようといった雰囲気があるのも素敵だと思います。
中原区役所
(左から)まちづくり推進部 企画課 中尾さん
まちづくり推進部 企画課 深谷さん
まちづくり推進部 企画課 田中さん
地域みまもり支援センター 地域ケア推進課 藤原さん
まちづくり推進部 地域振興課 太田さん
所在地 :神奈川県川崎市中原区小杉町3-245
電話番号:044-744-3113
URL:https://www.city.kawasaki.jp/nakahara/