2019~2022年度にかけて、相鉄・JR・東急線を結ぶ直通線が開業!

「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」のポイントと、新駅の魅力をインタビュー!

海老名や湘南台から横浜までをつなぐ「相鉄線」(相鉄本線・相鉄いずみ野線)。このほとんど中間地点にある「西谷」駅から東急東横線「日吉」駅に向かって、新しい路線を伸ばす工事が行われているのをご存知だろうか。

相鉄線「西谷」駅から先は地下トンネルとなり、1駅先に「羽沢横浜国大」駅が新設され、JR線と合流する。また、その先ではJR「新横浜」駅付近と東急東横線「綱島」駅付近にそれぞれ新駅が設置され、「日吉」駅で東急東横線に接続する。これらは「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線」と呼ばれ、現在工事の最盛期を迎えている。

複数の鉄道事業者を結ぶこの大事業を、一手に担っているのは、「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」という独立行政法人だ。今回は同法人東京支社でこの2つの直通線事業を担当している小川淳さんにお話を聞きながら、同路線のみどころと、新駅の魅力を探っていく。

今回取材にご協力頂いた鉄道建設・運輸施設整備支援機構 小川淳計画部長
今回取材にご協力頂いた鉄道建設・運輸施設整備支援機構 小川淳計画部長

――まずは「相鉄・JR直通線」及び「相鉄・東急直通線」の事業の沿革について教えてください。

小川さん:これらの事業は、もともと「速達性向上計画」が国土交通省に認定されたことから始まりました。2006(平成18)年に「相鉄・JR直通線(SJ線)」が、2007(平成19)年に「相鉄・東急直通線(ST線)」がそれぞれ認定を受け、これが公式な事業の始まりということになっていますが、実はその前段として、2000(平成12)年に「運輸政策審議会」というものがあり、その際の「第18号答申」のなかで、「神奈川東部方面線」としてこの区間が位置付けられました。

事業開始から今年で13年目を迎えますが、まもなく2019(令和元)年11月30日にSJ線の開業予定、来年の2022(令和4)年度下期にST線の開業を目指し、現在土木工事が最盛期に入っているところです。

最大の目標は「時間短縮」
最大の目標は「時間短縮」

――どのような課題があり、どのような目的を持って、事業化に至ったのでしょうか?

小川さん:「時間短縮による利便性向上」ということが一番の目的になっています。相鉄沿線である海老名や湘南台からは、「横浜」駅で一旦乗り換えないと東京都心へは出られません。それが今回、JR東海道貨物線に接続する路線が開業することで、渋谷や新宿といった都心の街まで、乗り換えなしで出られるようになります。さらに所要時間も従来に比べて15分以上大幅に短縮されます。このような不便の解消と、時間の短縮がこれまでの課題だったので、今回はその課題の解消が大きな目的となっています。

お話をうかがった小川淳部長
お話をうかがった小川淳部長

また、第2の目的は「新幹線へのアクセスの向上」。横浜市の西部の方や神奈川県の県央部の方は、同じく「横浜」駅で乗り換えをしないと新幹線停車駅である「新横浜」駅には出られません。しかしこれが今回の直通化によって、乗り換えなしでスムーズに「新横浜」駅まで行くことができるようになるのです。実はこちらはかなりの時短になります。「新横浜」駅までの所要時間が、従来の半分以下になるという地域も多くあります。相鉄沿線だけではなく、「新横浜」駅よりも都心側にお住まいの東急沿線の方にとっても、今までは「菊名」駅での乗り換えが必要だったものが、直接「新横浜」駅まで行けるようになるので、メリットはとても大きいと思います。ただし、これらの時短効果が現れるのは、ST線が開業する2022(令和4)年度下期以降ということになります。

そして第3の目的は、「混雑の緩和」です。こちらは「広域鉄道ネットワークの形成」とも関係しますが、つまりSJ線とST線が開通することで、「横浜」駅で乗り換えていた人がこちらに流れてきますので、混雑の分散・緩和につながるだろう、ということですね。そういった緩和効果も見込んでいます。

相鉄・JR直通線新型車両「12000系」 ※画像提供 相模鉄道(株)
相鉄・JR直通線新型車両「12000系」 ※画像提供 相模鉄道(株)

――現在の工事の進捗状況についてお聞かせください。

小川さん:まずは、先行して開業するSJ線について。「西谷」駅から「羽沢横浜国大」駅の区間では、鉄道が走るために必要な施設はほとんど工事が完成しています。今は開業に向けて、実際に営業が始まってからのことを想定した訓練運転を実施中。このまま順調に進めば、2019(令和元)年11月30日に開業予定です。

また、ST線については、現在土木工事の最盛期という段階で、こちらは「羽沢横浜国大」駅から「日吉」駅までの10キロ区間となります。駅と駅を結ぶトンネルの区間と、駅自体の部分とを分けて工事を行っています。トンネル部分については、「羽沢横浜国大」駅から「新横浜」駅(新駅・仮称)に向かってと、「新綱島」駅(新駅・仮称)から「新横浜」駅に向かってのそれぞれが、現在掘削中という段階です。また、「新横浜」駅と「新綱島」駅の駅構造物については、現在は掘削が終わり、周りのコンクリートの構築をしているというところです。

残る区間は「新綱島」駅から「日吉」駅の間。こちらは現在、トンネル部分の掘削をするための準備工事を行っているところです。トンネル以外の地上部分は東急東横線の高架区間を2層にして、そのうち下の層を使います。こちらも工事の真っ最中というところですね。

各区間の工事が着々と進んでいる
各区間の工事が着々と進んでいる

西谷トンネル
西谷トンネル

 ――工事は順調ということですが、今回のSJ線・ST線の12.7キロ区間で、とくに注目すべく工事区間などがあれば教えてください。

小川さん:今回の工事区間は「西谷」駅から「日吉」駅にかけて、ほぼ地下トンネルの工事になりますが、都市を通過するためにいろんな交差物があり、非常に慎重に工事を進める必要があります。工法としては一般的なシールド工法になりますが、都市部での工事は特に技術的に難易度の高いものだと思っています。まずは何よりも安全第一ということを念頭に工事を行っています。

都市部の地下を掘削するという難しい工事
都市部の地下を掘削するという難しい工事

 少し専門的な話になりますが、「西谷」駅から「羽沢横浜国大」駅間のトンネルについては、「SENS(センス)」という工法を使っています。実はこの「SENS」という工法は私どもの機構が開発した掘削方法で、東北新幹線の三本木原トンネルの掘削で初めて適用した方法です。今まで、都市部で適用したことはありませんでしたが、今回「西谷トンネル」はこの工法を都市部で初めて適用した工事になりました。国道16号の直下で、土被り(どかぶり)約7メートルで、事前に想定した路面の変位よりも小さく抑えて掘削できたというのは、機構としても大きな成果であったと思っています。

――「相鉄・JR直通線」とともに開業する新駅「羽沢横浜国大」駅について教えてください。

小川さん:「羽沢横浜国大」駅のコンセプトは、「人とふれあう」「自然とふれあう」「風景と共生する」駅です。これは横浜市や学識経験者、相模鉄道さんと一緒に行った調整会議の中で決められたものです。このコンセプトに沿って協議・検討を行い、設計等を行ってきました。その結果がこのパースにあるような駅舎です。

「人とふれあう」というところについては、改札の前にある出入り口を2つの方向に開き、とても開放的な空間に設計しました。また、周辺エリアの歩行者ネットワークに考慮して、地区計画によって定められた「コミュニティプロムナード」という歩行者専用の広場へのアクセス性も考慮しています。

「羽沢横浜国大」
「羽沢横浜国大」

「羽沢横浜国大」駅
「羽沢横浜国大」駅

駅舎の屋根は、自然光を取り込む「膜屋根」というものを採用しました。まるでテントのような構造になっていますが、この屋根は「東京ドーム」と同様な素材で作られていて、軽量でありながら自然光を充分に取り込めて、強度も高い屋根になっています。一部は地下のホームから吹き抜ける構造になっていますので、自然の光が地下のホーム階まで届くようになっています。

また、この「膜屋根」の下の部分にはルーバーを設けています。これはそこから入った風が駅舎の中を通り抜けていくようにするための工夫で、このような細かな部分の積み重ねで、自然環境とのつながりを感じられる「自然とふれあう」を実現しました。

小川さん
小川さん

「風景と共生する駅」については、特に駅舎の仕上素材にこだわりました。「鉄、レンガ、ガラス」をキーマテリアルとし、これらを組み合わせたシンプルで流行に流されず、時を経てさらに醸成するような、落ち着いた雰囲気の駅舎となるようにしています。

このほか、設備に関しては、駅舎全体がユニバーサルデザインに配慮した造りになっています。トイレなどは障がい者の方や乳幼児を連れた方などにも使いやすいように、男女別のトイレ以外に「多機能トイレ」を設置。そこには人感センサーによる音声案内など、視覚障害の方が利用しやすいような配慮もしています。エレベーターについても、車椅子の方でも使いやすい「スルー型エレベーター」となっています。

――直通運転には新車両が採用されると聞きましたが、詳しく教えてください。

小川さん:車両については、基本的に相模鉄道さんが考えられているので私どもはそれほど詳しくないのですが、直通運転の区間には「12000系」の車両を使われると聞いています。この12000系は相鉄線の新車両で、2019(令和元)年の春から相鉄線内で運転を始めておりますが、SJ線が開業すればこの車両がJR線のほうにも入っていくことになりますので、今後は都内でも見られるようになるかと思います。

――「羽沢横浜国大」駅周辺は同時に周辺地区の開発も行われていますが、これからの街に対する思いと、事業完成によって期待されることについてお聞かせください。

小川さん:鉄道・運輸機構は鉄道事業の部分を完成させること、つまり鉄道の開業までを担う組織ですので、「街づくり」という部分に関してはあまり言及できないのですが、移動時間の短縮によって、利便性の高まる地域に住宅、商業施設、事業所など様々なものが新たに立地するということが予想されます。それにともなって交流人口も増えると思いますので、新駅周辺に限らず、沿線地域全体がこの新路線の開業を機に活性化していけばいいなと思っております。

今回の新駅と新路線の設置については、私たちだけではなく、自治体や鉄道事業者をはじめとして多くの機関が関係しており、様々な部分で調整をしながら進めてきている事業です。地元の皆様や関係機関には、多大なるご協力をいただいており、心より感謝申し上げたいと思います。まずは何よりも安全に工事を進め、無事に開業させることが我々の責務だと考えています。

――小川さん、今日はありがとうございました!

小川淳さん
小川淳さん

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備機構 東京支社

計画部長 小川淳さん
鉄道・運輸機構URL:https://www.jrtt.go.jp/
直通線URL:http://www.chokutsusen.jp/
※この情報は2019(令和元)年8月時点のものです。