特別インタビュー

リニア中央新幹線の新駅「神奈川県」駅(仮称)の開発に伴う、「橋本」駅の変貌と未来について「相模原市 リニアまちづくり課」へ伺いました

2027年以降のリニア中央新幹線新駅「神奈川県」駅(仮称)開業に向けて、「橋本」駅周辺では大規模なまちづくりが始動している。 既存のJR横浜線、JR相模線、京王相模原線に加え、新たな高速鉄道が乗り入れる交通結節点としてのポテンシャルを最大限に活かし、ものづくり産業の集積や豊かな自然環境を背景に、「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」を軸にしながら、橋本ならではの未来志向のまちづくりが進められている。 

市民の意見を反映しながら、未来の世代に誇れる新たな都市の創造に向けて、着実に歩みを進めている本計画について「相模原市 都市建設局 リニアまちづくり課」の佐藤さんにお話を伺った。

取材にご協力いただいた「相模原市 都市建設局 リニアまちづくり課」の佐藤さん
取材にご協力いただいた「相模原市 都市建設局 リニアまちづくり課」の佐藤さん

現在のまちづくり進捗と計画スケジュールについて

――まずは、現状のまちづくりの進捗と今後の計画スケジュールを教えてください。

佐藤さん:現在、「橋本」駅南口では、土地区画整理事業と街路事業が同時に進められています。これらの事業は、2023(令和5)年3月に都市計画決定を行い、土地区画整理事業に関しては2024(令和6)年12月、施行予定者である「UR都市機構」さんによって土地区画整理事業の認可申請が国土交通省に出され、2025(令和7)年度中の事業認可の取得を目指して進めているところです。

リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場
リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場

土地区画整理事業施行区域・都市計画道路区域(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
土地区画整理事業施行区域・都市計画道路区域(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

佐藤さん:また、土地区画整理事業における土地利用ですが、「橋本」駅南口周辺地区が目指す“まちの将来像”と、それを形成するための“まちづくりの誘導方針”を定めた「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」を2023(令和5)年11月に策定しました。

「橋本」駅周辺エリアは既存のJR横浜線、JR相模線、京王相模原線に加え、リニア中央新幹線、圏央道の相模原I.C.など広域的な交通結節点としての優れた機能を有する地区ですので、ものづくり産業の集積や、多様な人々の往来、豊かな自然を生かして、橋本ならではのまちづくりを進めていきます。

相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン
相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン

――現状の事業計画に対する反響を教えてください。

佐藤さん:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」の策定にあたっては、2023年(令和5年)11月以前に、パブリックコメントやオープンハウス型の説明会を実施し、多くの市民からご意見をいただきました。

また、2024年(令和6年)11月に行われた「さがみはらリニアフェスタ」では地下の工事現場の様子が公開されたほか、地上ステージでの地域団体によるパフォーマンス、地下トンネル部でのプロジェクションマッピングによるリニア体験、AR技術を用いた車両走行イメージの体験などが行われました。これらのイベントを通じて、実際に車両が走行する様子をイメージしていただき、特に子どもたちからは未来の乗り物として強い関心が寄せられています。

「神奈川県」駅(仮称)の工事現場で開催された「さがみはらリニアフェスタ」の様子(引用:相模原市緑区紹介サイト「すもうよ緑区」)
「神奈川県」駅(仮称)の工事現場で開催された「さがみはらリニアフェスタ」の様子(引用:相模原市緑区紹介サイト「すもうよ緑区」)

佐藤さん:リニア中央新幹線は全国的に見ても期待値の高い事業ですが、市民の皆さまにとってはそれに伴う橋本駅周辺のまちづくりによってどのような変化があるのかという点について、関心が強くなっています。新幹線そのものだけでなく、まちづくりに対するお声についても、しっかりと期待に応えていけたらと考えています。

駅まち一体のまちづくりへ向け、本格的に始まる「橋本」駅南口周辺地区の開発

――「橋本」駅南口周辺地区は、計画によってどのように変化していくでしょうか。

佐藤さん:現在の橋本駅南口周辺地区は、大型商業施設や高層マンションが立ち並ぶ北口とは対照的に、低層の住宅街が広がっています。本計画では、駅周辺の土地の高度利用を検討しており、リニア新駅の開業を機に、駅前としての機能がより合理的で利便性の高いものへと変化することが期待されています。

現在協議を進めている京王線の駅移設が実現すると、JRの改札と京王線の改札、リニア中央新幹線の新駅が直線上に並び、リニアは地下、JRは地上2階、京王線は高架となり、地下を含む立体的な空間が構成されます。これらの交通拠点を結ぶ交流・賑わい軸の形成により、街全体のにぎわいがさらに高まることが期待されています。

交通結節機能強化のイメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
交通結節機能強化のイメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

佐藤さん:また、リニア中央新幹線「神奈川県」駅(仮称)上には、幅員49メートルの道路が建設され、幅の広い歩道や自転車専用通行帯、緑と憩いのスペースも設けます。これにより、公共空間が美しくなるだけでなく、駅までのアクセスもよりスムーズで快適なものになると考えています。

――地下となるリニア、地上2階のJR線、高架上となる京王線とそれぞれ階が変わってきますが、これらはどのようにつながっていくのでしょうか。

佐藤さん:地下のリニア駅、地上2階のJR線、高架となる京王線は、ゆとりある歩行者空間で接続され、縦方向の移動もスムーズに行うことのできる立体的な構造となります。

交流・賑わい軸の接続イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
交流・賑わい軸の接続イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

佐藤さん:自由通路と地上部の道路沿いには、にぎわいを創出する様々な施設や交通広場を配置し、活気あふれるメインストリートとなることを目指しています。道路上の緑と憩いの軸と、駅を結ぶ縦のメインストリートが連携することで、誰もが歩いて楽しめる魅力的な街の実現が期待されています。

交流・賑わい軸の空間イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
交流・賑わい軸の空間イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

――「交通広場」はどのような機能を持つのでしょうか。

佐藤さん:計画地中央部に整備を予定している「交通広場」は、路線バス、高速バス、タクシーなどが集まるターミナル機能を持つとともに、歩行者が安全かつ快適に利用できる十分なスペースを確保した、ゆとりある空間として整備する計画です。

また、災害時には一時避難場所としても活用できるよう考慮しています。

パブリックスペースでの活動イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
パブリックスペースでの活動イメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

ものづくり産業の推進がもたらす、街への効果

――ものづくり産業を街の特徴として挙げ、これを活かす計画をされていますが、周辺に住む皆さまにとって、これはどのような利点になることを想定されておりますでしょうか。

佐藤さん:相模原市は、神奈川県が推進する「さがみロボット産業特区」や、東京都の「多摩イノベーション交流ゾーン」に指定されている特性を活かし、ものづくり産業を街の重要な特徴として発展させる計画を進めています。「リニア駅周辺まちづくりガイドライン」では、まちづくりの柱として、「テクノロジー」「プラットフォーム」「グリーンライフ」を掲げており、それぞれが循環・発展することで、未来を拓くまちを目指します。

「テクノロジー」は広域の産業・研究開発機能と連携する拠点を形成し、ロボット、生活支援技術、ICT等の先端技術がそばにあるまちを目指すもの、「プラットフォーム」は、リニアがもたらす人々の交流や活動の圏域の拡大を活かし、 まちに集まる多様な人々をつなぎ、出会いの連鎖を引き起こすことで新たな価値を創造するもの、「グリーンライフ」では、都市部での脱炭素型まちづくりと豊かな自然環境との連携により、環境共生型ライフスタイルの実現を目指すものです。

各ゾーン間の機能連携による循環・発展のイメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)
各ゾーン間の機能連携による循環・発展のイメージ(引用:「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」)

佐藤さん:「橋本」駅周辺のゾーニングにおいては、「ものづくり産業交流ゾーン」を設け、研究、インキュベーション、交流等の機能導入を図り、広域から高度人材が集まる交流・連携の拠点として、圏域内外のものづくり産業の更なる発展や新たな技術創造を牽引することを計画しています。周辺にお住まいの方にとって、自らのスキルアップやキャリア形成の機会も増えるでしょうし、インキュベーションやコワーキングスペースなどが充実すれば、より多様な活動に参加しやすくなり、地域の活性化にもつながるものと考えております。

イノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO」がJR東海によって2024(令和6)年にオープンした
イノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO」がJR東海によって2024(令和6)年にオープンした

都市と自然のベストミックスを掲げる相模原市の魅力

――最後に、これからこのエリアに住みたいと考えている方々に一言お願いいたします。

佐藤さん:相模原市は“都市と自然のベストミックス”を掲げています。特に橋本エリアは、これまで培ってきたものづくり産業の土壌があるだけでなく、交通結節点としての機能もあります。

また橋本エリアは、5つの湖をはじめとする、自然に恵まれた津久井地域への玄関口にもなっています。先端技術の拠点としてリニア中央新幹線とともに成長していく街でありながら、一方で豊かな自然が身近にあるという環境が、橋本エリアの大きな魅力だと思います。

「相模原市役所」
「相模原市役所」

相模原市 都市建設局 リニアまちづくり課

佐藤さん
所在地:神奈川県相模原市中央区中央2-11-15
電話番号:042-754-1111(代表)
URL:https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/
※この情報は2025(令和7)年3月時点のものです。