Kamoi Special Interview

自分で壁を攻略していく楽しさを。プロクライマー小山田大プロデュース「クライミングジム プロジェクト」

「鴨居」駅北口側、鶴見川にかかる「鴨池橋」を渡り西へ少し歩いた場所にある「クライミングジム プロジェクト」。工場団地の一角にある建屋に一歩足を踏み入れると、広々とした空間いっぱいにクライミングウォールが設置されている、世界的に活躍するプロフリークライマー・小山田大氏が経営、プロデュースしているボルダリング専門のジムだ。

40代になってもなおトップクライマーである小山田氏はシーズン中はフィールドに出ているが、小山田氏を慕って集まったスタッフ・インストラクター陣によって、ハイレベルなジム機能が維持されている。今回は同ジムを小山田氏と二人三脚で経営する株式会社ダイホールド代表取締役の佐々木千恵さんに、ジムの特色やボルダリングの魅力、鴨居エリアについてなど幅広くお話を伺った。

「クライミングジム プロジェクト」施設外観
「クライミングジム プロジェクト」施設外観

トップクライマーと共にたどり着いたクライミングジムの姿

――2009(平成21)年にオープンされたそうですが、この街にジムを作られた経緯を教えてください。

佐々木さん:当時から、「都筑区は若い世代の方が多い街」というイメージがありましたので、そこに期待してという面がありました。あとはやはり、ロケーションですね。このすぐそばに鶴見川が流れるのどかな雰囲気も気に入りました。
この建物はもともとあった工場を利用していて、最初は本当にボロボロだったのですが、自分たちの手で改装をして今のような形になりました。

工場を改装した広々とした空間いっぱいに設置されたクライミングウォール
工場を改装した広々とした空間いっぱいに設置されたクライミングウォール

――「ボルダリング」というスポーツが今ほどメジャーで無かった当時、この大きさのジムを開業するのはチャレンジだったのでは?

佐々木さん:確かに、当時も今もこの規模感のジムは珍しいと思いますが、私たちとしてはほかに選択肢が無かったので、「チャレンジした」という意識は無かったですね。トップクライマーである小山田大が現役を引退した後もクライミングに関わっていける場所として、それにはこの規模が必要だった、という自然な成り行きだったと思います。

そもそも、「ボルダリング」という言葉を世間に認知させたのは小山田なので、一定数のコアなファンの方がいてくださって、ちゃんとしたジムを作ればそういった方々が支えてくださるだろうということで、心配はしていませんでした。

「ボルダリング」のパイオニアならではの豊富な課題を設定

――「クライミングジム プロジェクト」のコンセプトと、施設の特徴を教えてください。

 世界的に活躍するプロフリークライマー・小山田大 氏(施設提供画像)
世界的に活躍するプロフリークライマー・小山田大 氏(施設提供画像)

佐々木さん:最大の特徴はジムの名前「プロジェクト」の通り、つまり良質な「課題」をたくさん持っているということです。小山田大という一流のプロによって、「いい課題」が作られ、それが商品になっているということです。

「いい課題」というのは、壁のデザインもそうですし、個々のホールド(壁を昇る際に手や足をかける所、突起物)の設定は経験値が大事な世界ですので、その点は小山田大の強みであり、うちのジムの強みだと思います。経験が豊富ということは、初心者の方からプロの方まで、あらゆる方に対応する課題を作れるということになります。

ボルダリングの最終的な目標は「外の実際の岩場で登る」というところにあります。そこに到達するためにトレーニングするのですが、当ジムのホールドはリアルな岩場を想定した形状と課題設定になっていて、そこも珍しいと思います。ただ、だからといって特に上級者向けというわけではないです。ハイレベルな方向けの課題もありますが、初心者の方向けの課題もしっかり揃っていますので、初めての方も大歓迎です。

広さが安全にもつながっている
広さが安全にもつながっている

――この空間の広さは、幅広いレベルの方に対応するためなのですね。

佐々木さん:そうですね。天井が高く、壁と壁の間が広く、マットの接地面も非常にゆとりをもっていて、傍からは贅沢な作りをしているように見えると思いますが、なぜかと言えば「安全のため」なんです。

壁が向い合わせに設置されていると、同時に両側の壁から落下した時に、大きな事故になることも想定されます。そういった落下地点も見極めた作りになっていますので、当ジムを始めてから13年間、実際に一度も落下事故を起こしていない点も自慢の一つです。

もちろんそれだけでなく、広い分だけ課題の数も豊富で、1面あたりの幅も広いため、一般的なものよりは2、3手ほど多いと思います。他のジムを経験されて来られる方はよく、「ものすごく疲れた」とおっしゃいますね(笑)。

仕事後のリフレッシュにも、習い事にも、上級者のレベルアップにも

――どのようなご利用者が多いのでしょうか?

佐々木さん:平日は近隣の方が中心です。近隣に企業も多いので、仕事帰りのビジネスマンの方々が多く、夜7時半から11時くらいが最も混む時間帯になっています。週末になると、埼玉や千葉方面など遠方からも来てくださる方もいたり、雨の日などは「山に行けないからここに来た」という方もいらっしゃいます。

年齢層は30代、40代が中心ですが、小学生のお子さんから60代の後半くらいの方まで幅広くいらっしゃっています。友人同士の方が多く、中にはご夫婦やカップルで利用される方もいます。このジムを通じてカップルになったという方もいらっしゃいます(笑)。趣味仲間を見つけるにも、とてもいいところだと思いますね。

トレーニング用のボード
トレーニング用のボード

――未経験者が初めて来る場合、まずどのようにすればいいでしょうか?

佐々木さん:未経験者の方はまず、「初回体験コース」というものを受けていただいて、安全面のことを中心に、ボルダリングの基本事項をご理解いただいています。その後、「サーキット」というドリルのような課題をお出ししているので、それを順番にクリアしていただく、という流れになります。

最初のサーキットは簡単な課題を10本程セットにしたもので、それから徐々にレベルアップするような形となっています。7セットのサーキットをご用意していますので、それぞれのペースで自由に進めていただけます。ちょっとずつ、でも着実にレベルが上がっていく実感ができるので、サーキットだけでも、かなり楽しむことができると思いますよ。

――基本的には、自分の力で解決して進んでいくのですね。

佐々木さん:それがクライミングの楽しさのひとつですね。「手取り足取り」ではなく「自分で攻略する」という面白さがあります。自分で考える、グループで相談するなどの楽しみ方はありますが、体型によっても人ぞれぞれに合ったコツが変わってくるので、一概に「教える」ということは実は難しいんです。

高難度な上級者向けの壁もある
高難度な上級者向けの壁もある

――なるほど。各種レッスンもあるようですがそちらはどういった内容になるのでしょうか?

佐々木さん:一般の方に向けては、毎週木曜日に「ショート道場」というものを行っています。特に予約も追加費用も不要で、気軽にご参加いただけます。インストラクターが課題をその場で作り、皆さんに登っていただいたり、分からないところはアドバイスをしたりしています。

子ども向けの「ジュニアスクール」は、毎週水曜日の夕方の4時から6時45分まで、ジム全体を貸切にして行っています。小学校3年生から中学2年生の生徒さんを対象にした「習い事」のようなイメージです。基礎的なことから、だんだんとステップアップしていき、時々ゲームなども混ぜて実施しています。ただ、現在はお待ちいただく方もいるくらい人気をいただいており、その点はご了承いただければと思います。

他にも、毎週金曜日には「サーキット講習」といって、サーキットで壁に当たってしまったような人たちに、ポイントを教えていくということも行っています。

レベルや目的に合う各種レッスンも用意されている(施設提供画像)
レベルや目的に合う各種レッスンも用意されている(施設提供画像)

――インストラクターによる個人レッスンもありますか?

佐々木さん:はい、有料になりますが行っています。サーキットを進めていく中で、皆さん体型も違い、登り方も違ってくるため、全てを教えるということはできませんが、ある程度ご自分で必要性を感じていただいた方であれば、インストラクターも力になれると思います。

――日常的なフィットネスとしても、ボルダリングはおすすめでしょうか?

佐々木さん:そうですね。実際に、そうした目的で来られる方も多いです。ボルダリングは、体幹や身体の柔軟性を鍛えられますし、実はストレッチ効果もあったりします。また、課題をこなすのはパズルを組み合わせるようなものなので、ゲーム性も高さを楽しまれている方もいらっしゃいます。

運動が苦手という方も、ボルダリングは自分の好きなペースでできるという魅力もあり、少しずつ着実に上達していくので、自信がつくと思います。まずは身体を動かしてみようというような目的でも、ぜひ気軽に来ていただけるとうれしいですね。

豊富な経験をもつインストラクター
豊富な経験をもつインストラクター

便利で活気があり、緑とのどかさもある「バランスのいい街」

――鴨居エリアの魅力について、どのようお感じですか?

佐々木さん:のどかでいいところですよね。都会っぽいところもありますが、緑が多くて、そのバランスがいいなと思います。

私は隣の保土ヶ谷区に住んでいて、この地域も知っていましたが昔は何も無い印象でした。それが今では、明るい街、若くて活気がある街というイメージになってきたと変化を感じます。交通手段もいろいろと増えて、東京都内に行くにも、横浜の中心部に行くにも、不便が全くない場所だと思います。

「鴨居」駅周辺の街並み
「鴨居」駅周辺の街並み

――鴨居でお気に入りの場所や景色があれば教えてください。

佐々木さん:すぐそこの「鴨池大橋」の、真ん中から見える富士山がおすすめですね。私も毎日通勤でこの橋を渡るのですが、ちらっと横を見て富士山を拝むと、心が洗われます。寒い日の朝なんか、特にきれいに見えますよ。映画とかドラマの撮影にも使われる、とても素敵な場所です。

鶴見川にかかる「鴨池大橋」から富士山も見える
鶴見川にかかる「鴨池大橋」から富士山も見える

――これから鴨居エリアに住みたい方に向けて一言メッセージをお願いします!

佐々木さん:先程も言った通りですが、「便利」だけど「のどか」というバランスの良い場所なので、心おだやかに過ごせてとても住みやすい街だと思いますよ。

 
クライミングジムプロジェクト
クライミングジムプロジェクト

クライミングジム プロジェクト

株式会社ダイホールド 代表取締役 佐々木千恵さん
所在地 横浜市都筑区佐江戸町417
電話番号:045-532-3499
URL:https://project-climbing.com/
※この情報は2022(令和4)年5月時点のものです。