茅ヶ崎市すべての子どもたちが地域の学校で学べる「インクルーシブ教育」を目指す「茅ヶ崎市教育委員会」

神奈川県の南部に位置し、湘南の中核都市として発展してきた茅ヶ崎市は、人口約24万人を擁し、気候風土に恵まれた街です。

今回は茅ヶ崎市役所の教育委員会を訪問し、教育理念をはじめ、インクルーシブ教育や水泳学習、香川地区の学校選択制について伺いました。

夏の服装として茅ヶ崎市役所で推奨されているアロハシャツに身を包んだ皆さん
夏の服装として茅ヶ崎市役所で推奨されているアロハシャツに身を包んだ皆さん

インクルーシブ教育と支援体制で目指す「誰一人取り残さない」茅ヶ崎市の学校づくり

——まずは、茅ヶ崎市が大切にしている教育方針・理念についてお聞かせください。

島口さん:茅ヶ崎市の教育基本計画では、「学びあい 育ちあい 支えあう 茅ヶ崎の教育を創造する ~豊かな人間性と自律性をはぐくむ~」を基本理念とし、他者との関わりから、お互いの立場や役割を認め合い、共に成長しようとする姿勢を大切にしています。

基本理念を実現するための重点施策「地域の教育資源を生かした学校運営」の一環として、学校や保護者、地域住民等が、学校運営に対して協議し、その考えを踏まえながら学校運営を進めていくコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を今年度中に全校に導入して環境整備を進めていきます。

「茅ヶ崎市教育基本計画(概要版)」より抜粋
「茅ヶ崎市教育基本計画(概要版)」より抜粋

島口さん:また、重点施策の「児童・生徒に寄り添った教育環境の充実」の一つとして、インクルーシブ教育と、「地域の教育資源を生かした学校運営」の一つとして水泳学習の民間企業との連携をご紹介します。

程島さん:まちづくりの指針となる「茅ヶ崎市総合計画」の政策目標の一つに、「誰もがいつでも学べ、生きがいを持って自分らしく暮らすまち」があり、その取り組みの方向性として「学びの機会の充実と地域文化の創造の促進」や「多様性を認め、尊重し合う社会の実現」が挙げられています。まさにインクルーシブ教育です。

すべての子どもたちが地域の学校で学べるよう、進めている二つの取り組みがあります。一つは特別支援学級を全校に整備すること。もう一つは悩みを抱えるご家庭の支援で、特別支援教育相談員が保護者の相談に応じたり、一人ひとり異なる悩みの背景を見極め、学校の支援体制をサポートしたりしています。茅ヶ崎市教育センターの青少年相談室では、不登校のお子様を中心とした相談体制も整えています。これからも茅ヶ崎市に住むすべての子どもたちが安心して教育を受けられる環境を整えていきます。

「茅ヶ崎市総合計画」(引用:茅ヶ崎市HP)
「茅ヶ崎市総合計画」(引用:茅ヶ崎市HP)

片山さん:2023(令和5)年度から、小学校の水泳学習を市内の複数のスイミングスクールを運営する事業者と協定を締結して行っています。茅ヶ崎市の公立小学校は全部で19校。2025(令和7)年度は7校が施設利用型の授業でスイミングスクールを活用し、残りの12校は学校で行う水泳学習にスイミングスクールの指導者に来てもらう指導者派遣型を実施しています。学びの質の向上や教員の負担軽減、維持管理のコスト縮減、地域経済の活性化など、複合的な効果を見込んでいます。将来的に小学校の水泳学習は、すべて施設利用型へと移行する方針です。

島口さん:昨年度、茅ヶ崎市は湘南で活動するスポーツクラブ「湘南ベルマーレ」と「持続可能な地域づくりに関する連携協定」を結び、学校教育として「サステナトレセンProject.」を始めました。湘南ベルマーレやサポート企業の方がプロジェクトに取り組む小学校を訪問し、5年生に対してSDGsの学びをサポートし、持続可能な地域づくりに取り組むものです。年に2校ずつ実施予定で、昨年度は、規格外野菜を活用したキッチンカーの出店、スポーツ用品のリサイクルなど多様なアイデアが生まれました。

2025(令和7)年「サステナトレセンProject.」最終発表イベントの様子(引用:茅ヶ崎市)
2025(令和7)年「サステナトレセンProject.」最終発表イベントの様子(引用:茅ヶ崎市)

辻さん:3つめの基本方針「教育活動を効果的に進める教育行政の充実」に関連して、給食についてご説明します。中学校はこれまで原則お弁当持参でしたが、共働き世帯の増加をはじめとした家庭のライフスタイルの多様化や、子どもたちの栄養バランスへの配慮などを背景として、昨年より段階的に中学校給食の導入を進め、現在は13校すべてで提供しています。給食は相模原の調理施設からごはん、おかず、汁物などを配送しています。ごはんと汁物は保温コンテナと蓄熱剤を使用することで温かい状態で提供しています。市の栄養士が考案した献立や地場産食材の活用など給食を生きた教材とした食育を推進しています。

2025(令和7)年の実績ですと、赤羽根地区の「おざわ農園」さんが農薬を使わずに栽培した大根や長ねぎを使った「沢煮椀」や、じゃがいもや玉ねぎを使った「肉じゃが」、同地区の「どっこいファーム」さんの聖護院かぶを使った「春野菜の浅漬け」などを提供しました。「熊澤酒造」のビール粕や「中丸屋米店」の米ぬかなど地域資源を活用した土づくりに取り組んでいる「どっこいファーム」さんの聖護院かぶは生徒からも好評でした。他にも、ホノルル市との姉妹協定締結を記念したホノルル給食なども提供しています。なお、小学校でも茅ヶ崎の新しい地場野菜として注目されている「トルコナス」という白なすを使ったメニューなどを提供しています。

学校選択制で広がる特色ある教育と茅ヶ崎市香川エリアの魅力

——香川エリア周辺が学校選択制となっている背景を教えてください。

櫻田さん:茅ヶ崎市立香川小学校」の通学区域を特認地域に指定したのは2012(平成24)年4月のことです。土地区画整理事業による住宅地の造成により2005(平成17)年度に「香川小学校」の児童数が1,000人を超えるという見通しがあり、前年から学区の検討委員会を設置して協議を行いました。そして実際に児童数が1,000人を超え、その後も増加傾向の見通しだったことから特認地域とすることを決定し、「香川小学校」以外に「茅ヶ崎市立鶴が台小学校」「茅ヶ崎市立小出小学校」「茅ヶ崎市立室田小学校」にも通えるようにしました。児童を複数の学校に分散させることで、教室不足などの解消を図ったわけです。2025(令和7)年5月1日時点の香川小学校の児童数は895人ですのでやや減少していますが、他のエリアと比べて児童数が多い状況は変わっていません。

茅ヶ崎市庁舎。手前が分庁舎で、奥が本庁舎
茅ヶ崎市庁舎。手前が分庁舎で、奥が本庁舎

——学校選択制によって、どのような変化がありましたでしょうか。

辻さん:ひとつは目的だった学校規模の適正化が進んだことで、教室の過密状態が緩和され、教員の負担軽減にもつながりました。

またもうひとつは、学校が魅力発信に力を入れ始めたことです。通う学校を選んでもらうには各校の違いを知る必要があるため、それぞれの学校が特色を紹介しているわけですが、これが学校にとって自分たちの教育の特色を見つめ直すきっかけになっています。

保護者の皆さまもにとっても、自分の子どもにはどんな学校が合うか、そもそも地域にはどんな学校があるかということを改めて考える機会となり、教育への新たな関心につながっているように思います。

選択校のうちの一校「茅ヶ崎市立香川小学校」
選択校のうちの一校「茅ヶ崎市立香川小学校」

——香川エリアの学校・地域の連携の特徴など、「地域で子どもを育てる文化」があれば教えて下さい。

島口さん:地域の方々が小中学校の夏休みに楽しいイベントを企画してくれます。地域防災にも学校と地域が一緒に取り組んでいて、中学生が地域の方々と一緒に公園に行って防災倉庫の中を見たり、かまどベンチの使い方などを教わったりしています。

「香川公民館」の開催イベント「夏のおはなし会」(引用:茅ヶ崎市HP)
「香川公民館」の開催イベント「夏のおはなし会」(引用:茅ヶ崎市HP)

——実際に香川エリアへ転入・移住してきたファミリー層の反応や声は、いかがでしょうか。

辻さん:直接お声をいただく機会は多くはありませんが、2024(令和6)年度に行った市民意識調査の結果を見ると、香川地区を含む北部地域に住む方々は「災害や犯罪が少ない」「自然や緑、水が豊か」「歴史や伝統がある」「こころの通う近所づきあい」は他地域より評価が高いことがわかります。「歴史や伝統がある」という項目でポイントが高かったのは、「下寺尾官衙遺跡群」や「下寺尾西方遺跡」、「茅ヶ崎市博物館」など、歴史資源を身近に感じられる場所があることも影響しているのではないかと考えられます。

「どんなところに茅ヶ崎市の魅力を感じていますか?」に対する回答(「令和6年度茅ヶ崎市市民意識調査結果報告書」より抜粋)
「どんなところに茅ヶ崎市の魅力を感じていますか?」に対する回答(「令和6年度茅ヶ崎市市民意識調査結果報告書」より抜粋)

自然と利便性が共存する「コンパクトなまち」茅ヶ崎の住環境

——おすすめしたい茅ヶ崎市の教育環境はどんなところでしょうか。

島口さん:海と山に囲まれた豊かな自然環境だと思います。海に近い学校は、海辺を清掃したり、漂着ゴミからマイクロプラスチックの問題を考えたり、海をテーマにした学習を積極的に行い、香川地区など北部の丘陵地域ではさまざまな動植物の観察などに力を入れています。この丘陵地域にはかつて大小数多くの谷があり、「神奈川県立茅ケ崎里山公園」や「市民の森」の近くで特別緑地保全地区である清水谷は、今も多くの動植物の住処となっています。近くには2022(令和4)年に新設されたばかりの「茅ヶ崎市博物館」があり、多様な学びが得られる環境です。

市庁舎の向かいにある「茅ヶ崎市総合体育館」
市庁舎の向かいにある「茅ヶ崎市総合体育館」

——茅ヶ崎市の最大の魅力はどんなところでしょうか。

辻さん:約6~7キロメートル四方の市域に学校、行政施設、商業施設、公園など生活に必要な機能が集まったコンパクトなまちなので、自転車や徒歩でも移動しやすく、子育て世代や高齢者も無理なく暮らせます。都心へのアクセスもいいです。2020(令和2)年にイギリスの「MONOCLE(モノクル)」という雑誌で発表された「世界のベストスモールシティ25」に、日本で唯一茅ヶ崎市が選出され、第5位に輝いています。

茅ヶ崎の大きな魅力の一つは、ゆったりとした空気感と、都市部へのアクセスの良さが共存する「ちょうどよい距離感」にあると思います。こうした環境が、人々の創造力を育む土壌となり、茅ヶ崎の魅力を作ってきたのだと思います。茅ヶ崎には、作家の開高健さんやサザンオールスターズの桑田佳祐さん、宇宙飛行士の野口聡一さんなど、多くの日本を代表するゆかりの人物がいます。豊かな自然と、移動しやすいコンパクトなまちのつくり、そして文化的な厚みも茅ヶ崎ならではの魅力です。

「茅ヶ崎市総合体育館」の隣にある「茅ヶ崎市民文化会館」
「茅ヶ崎市総合体育館」の隣にある「茅ヶ崎市民文化会館」

——個人的におすすめしたい、茅ヶ崎市のおでかけスポットやイベントがあれば教えていただきたいです。

島口さん:茅ヶ崎市の頭文字「C」をかたどった海辺のモニュメント「茅ヶ崎サザンC」は鉄板でしょう。皆さん「C」の中に烏帽子岩を入れて写真を撮っています。北部地域に住む者としては、自然の中で長いすべり台やふわふわのトランポリンで遊べる「神奈川県立茅ケ崎里山公園」も推したいです。

あと、毎年7月の海の日に行われる「浜降祭(はまおりさい)」もおすすめです。市内の各神社からお神輿を担いで来て、そのまま海に入る姿や、早朝の海辺にお神輿やのぼり旗が集まる様子は勇壮です。

「茅ヶ崎海岸浜降祭」(引用:茅ヶ崎市HP)
「茅ヶ崎海岸浜降祭」(引用:茅ヶ崎市HP)

程島さん:私はテニスをやるので「柳島スポーツ公園」ですね。市内では比較的新しい施設で、質のいい人工芝のコートが整備されています。トランポリンなどがあるので、子どもたちと一緒に行っても楽しめます。また、2025(令和7)年7月7日の七夕の日には向かいに「道の駅 湘南ちがさき」がオープンしたので、それも楽しみです。

2025(令和7)年7月7日にオープンした「道の駅 湘南ちがさき」(引用:茅ヶ崎市HP)
2025(令和7)年7月7日にオープンした「道の駅 湘南ちがさき」(引用:茅ヶ崎市HP)

片山さん:「柳島スポーツ公園」には陸上競技場があるので、中学生が陸上大会をやったり、高齢者の方が夜にトラックを走ったりしています。サッカーやラグビーもできますし、スポーツ好きには本当に良いところです。

辻さん:柳島エリアには「あさまる」など鮮魚がおいしいお店が多いです。香川エリアでは150年以上続く蔵元「熊澤酒造」が運営するレストラン「MOKICHI TRATTORIA」が有名ですね。「香川」駅から少し歩いたところに見えてくる移築した古民家や酒蔵を改装した建物は風情がありますし、子ども連れでも楽しめます。日本酒やビールなどの醸造を手がけていて、毎年オクトーバーフェストもやっていますよ。

「MOKICHI TRATTORIA」の店内
「MOKICHI TRATTORIA」の店内

櫻田さん:駅ビルの「ラスカ」の中に湘南で有名な「葦」という洋菓子店があって、そこのケーキが好きでよく買っています。

——最後に、今後の教育施策の展望と、香川エリアに住むことの魅力について改めて教えてください。

程島さん:教育基本計画に「インクルーシブ教育」という言葉を明記しているのはこの地域の特色だと思います。茅ヶ崎市に住んでいるすべての子どもたちが地域の学校で学ぶことができること。これを念頭に、まずは特別支援学級の全校整備を実現し、他の施策も進めていきたいです。

辻さん:学校と地域が協力して子どもたちの成長を支えていくことがより大切になってきていると感じています。市では毎年、交通安全啓発のため新小学1年生に黄色い帽子やランドセルカバー、黄色いワッペンをお渡ししています。これらはすべて民間企業の皆様からご寄贈いただいており、寄贈帽子は市庁舎から県道を挟んですぐの「中央公園」のネーミングライツを取得されている第一カッター興業さんから、ランドセルカバーは神奈川県トラック協会さん、日本コープ共済さん、黄色いワッペンはみずほ銀行さん、損害保険ジャパンさん、明治安田生命保険さん、第一生命保険さんからいただいています。

今後も地域の方々との協力関係を大切にしながら、子どもたちにとってよりよい教育環境づくりに向け取り組んでまいります。

「第一カッターきいろ公園(中央公園)」
「第一カッターきいろ公園(中央公園)」

島口さん:学校と地域の連携がさらに広がるよう、教育委員会として支援を続けていきます。

茅ヶ崎市教育委員会

教育総務部学校教育指導課
指導主事 島口潤さん、程島観さん、片山晃さん
教育総務部 学務課
課長補佐 辻雅之さん、主任 櫻田彩香さん
所在地 :神奈川県茅ヶ崎市茅ヶ崎一丁目1番1号
電話番号:0467-82-1111(代表)
URL:https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/kyouikuiinkai//
※この情報は2025(令和7)年6月時点のものです。