横浜市立日吉台中学校 校長 高橋秀吉先生 インタビュー

教職員の意識を鍛え、子どもの主体性を伸ばす学校をつくる「横浜市立日吉台中学校」の取り組み

「教員こそが最大の教育環境」と話す高橋校長先生は、「横浜市立日吉台中学校」に赴任して以降、さまざまな改革を行ってきた名物校長先生。全校生徒1000人というマンモス校を取りまとめ、地域を巻き込みながら学校経営をしていらっしゃる高橋校長先生に、学校のこと、地域のことを詳しくお伺いした。

全校生徒1000人というマンモス校、横浜市立日吉台中学校
全校生徒1000人というマンモス校、横浜市立日吉台中学校

――学校の概要についてお教えください

高橋校長先生:本校は1947(昭和22)年4月に、「横浜市立日吉台小学校」の4教室を間借りして開校したのがはじまりだったと聞いています。昨年70周年を迎え、周年行事も無事に終えたところです。在校生の数が横浜市内2番目という大規模校で、現在1年生8クラス、2年生9クラス、3年生9クラス、個別支援学級が4クラスあり、全校生徒は約1000名。教職員は現在60名おります。本校自慢の大きなグラウンドは市内2番目の広さを誇り、全校生徒が一度に集まれる大きな体育館も特徴的です。

大きな体育館
大きな体育館

――教育目標や力を入れている取り組みなどがありましたら、お教えください

高橋校長先生:教育目標は例年のものに加え、特に今年度は「コミュニケーションの徹底(職員間も生徒へも)」と、「主体的で協働的な質の高い仕事(チャレンジ精神)」に重点を置いていきたいと思っています。学校の仕事は、子どもたちの公共心を育て、社会貢献できる人間を育てること。失敗を恐れずにチャレンジするたくましさを育むこと。そして子どもたちの主体性の伸ばすことです。

私は「教員こそが最大の教育環境」と考えていますので、この部分を鍛えて最良の環境をつくり、教育の質を高めていきたいと思います。また横浜市はもともと英語教育に力を入れており、1999(平成11)年度から市内全小学校で1年生から英語授業を組み込み、小中学校9年間を通した英語教育に取り組んでいます。現在本校でも英語授業ではデジタル教材を使用しており、そのお陰で先生の板書の時間が軽減され、生徒とのコミュニケーションの時間を増やすことができました。ネイティブの先生も常駐しておりますし、今後も英語教育には注力していきます。

「共に生きる」と刻まれた石碑
「共に生きる」と刻まれた石碑

――先生方への研修などにも力を入れていらっしゃるんですね

高橋校長先生:教職員研修も一方的に話を聞くのではなく、先生方に参加してもらうワークショップ形式を取り入れるなど工夫しました。するとその研修を受けた先生方が、今度は自分の授業にワークショップやハンズオンの生徒が参加できる要素を組み込むようになり、結果的に子どもたちが参加しやすい・自分の意見を言いやすい授業を実践しやすくなります。

本校では生徒の「主体性を伸ばす」ことが大きなテーマになっていますので、先生の意識が変われば授業が変わり、自ずと生徒の主体性を育てる教育やインクルーシブな環境ができあがっていきます。最大の教育環境である先生たちには、自分に向き合う3つのCとして“Change, Challenge, and Chance”、他者に対しての3つのSとして“Smile, Simple, and Speedy”という言葉を伝えています。子どものために考え、協力し行動する「チーム日吉台」のメンバーとして先生方を鍛え、彼らの個性を活かす環境をつくるのも私の大きな役割です。

オープンな校長室で先生にも生徒にも安心感を

――先生が赴任されてから、いろいろと学校も変化しているようですね

高橋校長先生:私が赴任して一番最初にした仕事は、校長室のドアの上部をガラスにしたことです。これによって校長室が開放的になり、生徒はもちろん先生方も相談や話に来てくれるようになり、幅の広い情報が私の元に集まるようになったと感じています。時にはクールダウンが必要な生徒が駆け込んできたり、先生方からの相談を受けたり、校長室はいろいろな役割がありますが、必要であればカーテンを閉めてプライバシーに考慮した空間もつくれます。でも基本的には開放してあるので、子どもたちが手を振ってくれたり、「お、秀吉先生いるな」なんて存在確認をしたり、ちょっとした安心材料になってくれればと思います。

高橋秀吉校長の6年間の想い
高橋秀吉校長の6年間の想い

――日頃の教育活動で先生が心がけていらっしゃることなどはありますか?

高橋校長先生:教育は「未来をつくる仕事」。そういう意味では家庭の子育てと教育は同じです。子どもたちが自分自身で考え、自分の能力を開発して自分らしい人生を生きるために、私たちは日々生徒たちに対峙しています。人は社会に貢献してこそ、人として生きる意味がある。もちろんそのサイズや貢献度は人により違いますが、それでいいんです。子どもたちは、大人の生き方をじっと見ています。子どもが失敗を恐れるのは、大人が失敗を許さないからかもしれないし、子どもが自主的に行動しないのは、大人が言われたことしかやっていないからかもしれない。子どもは大人の姿を映す鏡であり、「子どもは何も悪くない」というのが、私の基本スタンスです。毎日、「大人がどう生きるか」を試されているのだと肝に命じています。

――学校内に特徴的な施設などはありますか?

高橋校長先生:特徴的というほどではないかもしれませんが、特別支援教育の一貫として「STUDY ROOM」という部屋を設けています。これは大勢の中では集中できない生徒や、団体が苦手な生徒などが静かな環境で自分のペースで学べる場です。生徒は自分で勉強のスケジュールを決めて取り組みます。自分で判断してこの部屋に来て、自分で学ぶ内容を決め、分からないことがあれば自分から先生に質問する。これもある意味「自主性」ですね。

今は多様性を認め、いろいろな人がいることを受け止めて柔軟に対応する力が求められる時代です。例えば本校では女子生徒もズボンの制服を着用することも可能です。世の中には障害のある人から情緒が不安定な人、LGBTの人まで多種多様な人がいる、それを認め共存する環境を学校が真っ先につくることで、子どもたちに「多様性」「柔軟性」の意味を伝えられると考えています。

様々な種類の本が並ぶ図書室
様々な種類の本が並ぶ図書室

子育てサポート体制が整った日吉地区で、仲間と一緒に子どもを育てる

―― 地域と協力して行なっていることなどはありますでしょうか?

高橋校長先生:地域との連携なくして学校は成り立ちません。現在も学校の教育活動には多くの近隣の方々のご協力をいただいています。特に地域コーディネーターの神島さんに今年度からご協力いただいて、地域と学校をつなぐ役割を果たしていただいています。神島さんは長らく小学校でコーディネーターをされていて、地域の方に戦争体験のお話をいただいたり、修学旅行の付き添い大学生を見つけたりと学校の教育活動に必要な地域の人材を見つけて来てくださる方として、学校関係者の間では有名な方です。小学校を別の方に引き継いだというお話を聞いて、すぐにスカウトしました(笑)。

悲しいかな公立学校の教職員は定期的に異動がありますが、日吉地区の人材宝庫の鍵を握る神島さんに異動はない。今後は神島さんと協力しながら、学校での活動に地域の方々をもっともっと巻き込んで、一緒に子どもたちを育てたいと思います。私のライフワークである「ファシリテーション」、これは連携・協働を促すという意味ですが、お互い情報発信をし合いながら様々な人たちを巻き込んで、よりよい方向に進む合言葉でもあります。地域の方が学校に来てくださるだけでなく、中学生たちがもっと街に出て行って一緒に何かすることもできるはず。まだまだたくさんの可能性が眠っている地域との連携・協働の道を探っていきたいと思います。

地域コーディネーターの神島さん
地域コーディネーターの神島さん

―― 中学校周辺の子育て環境の魅力について教えてください

高橋校長先生:とにかくこの日吉地区は子どもを大切にする地域のようで、多くの団体・グループが子育て世代や子どものサポートを積極的に行っています。例えば、本校のコミュニティスクール施設を利用した子育てサロン「はひふへほ」、自己責任で自由に遊ぶ「鯛ヶ崎公園プレイパーク」、年齢を問わず誰でも集まれる「みんなの広場」「えんがわの家 よってこ しもだ」、日吉地区の子育てを応援する「吉子育て応援ボランティアネットワーク ポコ・ア・ポコ」など、ここには書ききれないほどの子育て応援・子どもサポートの場が溢れています。こういったサポート体制に背中を押されるように、子育て中のお母さんたちも自主的にサークルを立ち上げたり、仲間づくりに積極的で、地域の方々とも連携をとって活動をされているようです。学校からすると、そういった人たちがやがて小学校・中学校と入学してくだされば、学校と地域がより繋がりを深めていくことができるので有難いですね。

「地域で子ども守ろう・育てよう」という意識が、どの世代にも根強くあるように見受けられます。子どもが生まれ、そこから地域との関わりが始まるというご家庭も多いと思いますが、ここ日吉地区では本当に様々な団体・グループが温かく迎えてくれますので、子育てで孤独感や不安を感じることは少ないと思いますよ。ぜひ皆さんも地域の子育てに参加いただければと思います。

横浜市立日吉台中学校 校長 高橋秀吉先生
横浜市立日吉台中学校 校長 高橋秀吉先生

横浜市立日吉台中学校

校長 高橋秀吉先生
所在地:横浜市港北区日吉本町4-9-1
電話番号:045-561-2183
URL:http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/jhs/hiyoshidai/
※この情報は2018(平成30)年10月時点のものです。