誰もが健康的に暮らせる住環境を目指し 着々と再開発が進む東神奈川エリアの未来について聞きました/横浜市都市整備局 井上さん・梅木さん
人口減少と超高齢社会、地球温暖化による災害の激甚化などに対応し、さらなる発展を図るため、横浜市は2015(平成27)年、従来の横浜都心部である3地区に、湾岸エリアの「東神奈川臨海部周辺地区」と「山下ふ頭周辺地区」の2地区を加えた「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」を策定し、新たなまちづくりを推し進めている。今回は横浜市都市整備局の都心活性化推進部を訪ね、 みなとみらい・東神奈川臨海部推進課の井上さんと梅木さんに、東神奈川エリアの再開発をはじめとした整備の進捗や今後について伺った。
構想から10年で多数の整備事業を実現させ、市の魅力向上につなげている
——『横浜市都心臨海部再生マスタープラン』には、横浜市の臨海部を5つに分け各地区の特徴を活かした計画が記されていますね。各地区の特徴や計画目標をお聞かせください。
井上さん:このマスタープランを策定した2015(平成27)年当時は、「横浜駅周辺地区」では国際都市の玄関口としてふさわしいまちづくり計画「エキサイトよこはま22」、「みなとみらい21地区」では複数街区で開発事業者公募の動き、「関内・関外地区」では市庁舎移転の動きなどがありました。
従来の横浜都心部が、日本有数のターミナル駅を中心とした「横浜駅周辺地区」、オフィスビルや商業施設、MICE拠点等が立地し国内外から多くの人々が訪れる「みなとみらい21地区」、開港の歴史が残る「関内・関外地区」の3地区です。
ここに新たに加えられることになったのが、横浜最大の資源である港に面し、新たな機能の受け皿となるポテンシャルがある「山下ふ頭周辺地区」と「東神奈川臨海部周辺地区」です。高い国際競争力を持つ“世界都市”の顔となる都心臨海部形成のための中長期計画で、各地区の特徴を活かしながら人々に選ばれるまちを目指しています。
——目標年次を2050年と定める『横浜市都心臨海部再生マスタープラン』ですが、第一段階の目標年次として今年2025(令和7)年を据えられていますね。全体のプロジェクトの進捗状況を教えてください。
井上さん:「横浜駅周辺地区」では「横浜」駅きた西口鶴屋地区の市街地再開発事業やJR横浜タワーの整備が行われ、「みなとみらい21地区」ではMICE施設を有する「パシフィコ横浜ノース」や「Kアリーナ横浜」などの大規模集客施設、「横浜ハンマーヘッド」が整備されました。
井上さん:「関内・関外地区」では「横浜文化体育館」の再整備や新市庁舎の整備が実施されました。回遊性を高める新たな交通として、複数車両が連なった連接バス「BAYSIDE BLUE」や「桜木町」駅前から出るロープウェイ(YOKOHAMA AIR CABIN)も誕生しました。
井上さん:現在、「関内」駅前では市庁舎跡地の再開発が進行中で、隣接する街区でも再開発事業を行うための手続きが進んでいます。また、横浜中央郵便局別館が「アソビル」という形で暫定利用されている「横浜」駅東口でも、市街地開発事業の実施を検討しています。そして貨物線の東高島駅北地区では土地区画整理事業が行われています。
約30年におよぶ整備事業で生まれ変わった「東神奈川」駅前
——「東神奈川」駅周辺の再開発はすでに完了していると伺いました。再開発の背景や時系列、完成した施設を教えてください。
井上さん:かつての「東神奈川」駅東口周辺は都市基盤が脆弱でした。そこで利便性の面でも防災の面でも「横浜」駅の隣駅としてふさわしい街にしようと、東口を中心に事業を進め、約30年かけて4つの事業が完了しました。
時系列でご説明すると、まず1991(平成3)年1月に、最初の事業となった「東神奈川駅東口地区市街地再開発事業」の準備組合が立ち上がり、地権者さんと行政、事業者による計画づくりが進められました。時間こそかかりましたが、この事業を前に進められたことにより他の隣接地に「自分たちもやれるのではないか」という機運が生まれ、その後の開発を後押しする形となったのです。
古い木造住宅の密集地には集合住宅を建てて土地の高度利用と防災性の向上を図るとともに、JR・京急「東神奈川」駅と周辺施設を接続する歩行者デッキを整備。エレベーターを新設してバリアフリー動線を強化し、需要の高い駐輪場も確保しました。この事業は2003(平成15)年3月に完了しました。
井上さん:「福祉施設整備事業」を終え、2004(平成16)年3月、「東神奈川駅前地区優良建築物等整備事業」により集合住宅を中心とした建物が竣工し、神奈川区民文化センター「かなっくホール」もオープンしました。そして最後に行われたのが「東神奈川一丁目地区市街地再開発事業」です。駐輪場や歩行者デッキを整備し、新設した集合住宅1階のエントランスロビーは災害時に帰宅困難者の一時滞在避難施設として開放されるようにしました。2019(平成31)年3月に工事を終え、2020(令和2)年12月に組合が解散しました。
広場や遊歩道、水辺空間など心地よい住環境を追求した整備が進む東高島駅北地区
——東神奈川エリア(東神奈川駅周辺)の中でも、臨海部や貨物駅の東高島駅北地区などは、再開発による発展が期待されるエリアかと思います。どのような街にしていきたいかお聞かせください。
井上さん:『横浜市都心臨海部再生マスタープラン』では、「東神奈川」駅周辺の機能配置イメージに「研究・教育」「医療」「健康」「居住」を掲げているように、横浜市は民間開発を適切に誘導して機能の集積を進め、市民が健康的に活動し、快適に暮らせるまちづくりを目指していきます。都市計画の中でエリアマネジメントを行う方針で、事業者さんにはにぎわい活動や防災活動などに取り組んでもらう想定です。
井上さん:東高島駅北地区は「東神奈川」駅から約400m。貨物列車の発着もなく、古い運河に護岸の石積みや係留船が残るエリアでした。生活利便施設がなく、公共下水道が未整備であるなど、都市基盤も脆弱な状況が続いていました。地元の皆さんからも有効活用を希望する声もあり、運河の埋め立てと道路の整備などを併せた区画整理事業を行うことになりました。事業区域は約7.5haで、東高島駅北地区の都市計画(東高島駅北地区地区計画)では、いくつかの地区に分けて土地利用方針を定めています。
井上さん:A・B地区は、医療・健康施設を含む開発を進める予定です。運河に面する低層部を中心に生活利便機能や商業機能を入れて賑わい創出を図ります。C地区にはタワーマンション建設を想定しています。人々が集い、楽しめるような広場を作り、地域交流などさまざまな活動に使ってもらおうと考えています。
また、津波の際に逃げ込めるように土地をかさ上げし、今後計画される2階か3階には津波避難のためのデッキを整備します。普段は水辺の眺望が楽しめるイメージです。D-2地区は広域的な防災機能に充てる予定です。大雨による横浜駅周辺地区の浸水に備えて下水道施設を整備し、いざというときに放水できるようにします。
井上さん:東高島駅北地区には「神奈川台場」という歴史的遺構があります。江戸時代末期に勝海舟が設計した砲台があった場所で、明治時代にその役割を終え埋め立てられました。しかし地中にほぼそのままの形で石積みが現存していると言われています。横浜市はこれまと同様に歴史資産を保全しながらまちづくりを進める方針で、F地区は神奈川台場の保全・活用のため、遺構の歴史を感じられる広場にしたいと考えています。
また、神奈川台場の歴史を感じながら散策できる通路も設ける予定です。この通路はF地区の広場と区内の神奈川宿歴史の道を繋ぎ、「歴史散策ネットワーク」とする予定です。この整備を機に神奈川台場について市民の方に知っていただき、愛着を持ってもらえればうれしいです。
井上さん:緑化は、地元の在来種や生物多様性などに配慮するなど、樹種の選定にこだわって進める方針です。快適な日陰の空間をつくって人々が集えるようにし、運河沿いの遊歩道やデッキ広場からの眺望も考慮したいですね。
——東神奈川臨海部周辺地区では、「山下ふ頭付近に向けて連続した水際の緑づくり」や「レクリエーション等活性化水域の整備」などを推進するとの記載がありました。詳しく教えてください。
梅木さん:活性化水域の範囲では、横浜市として桟橋整備などの事業化計画はありません。ただ、埋め立て後に残る水域もありますので、エリアマネジメントで活かすなど市民の皆さんと一緒に今後考えていければと思います。
東神奈川エリアからみなとみらいエリアへの道路整備計画も。さらなる利便性向上に期待
——HPには、【本地区と横浜駅周辺地区やみなとみらい21地区をつなぐ道路インフラや歩行者ネットワークの強化・拡充などを図ることとしている】との記載がありますが、「横浜」駅やみなとみらいまでの新たな歩道なども整備される予定でしょうか。
梅木さん:すでに、みなとみらい大通りがみなとみらい地区を南北に貫いていますが、東高島駅北地区からこの大通りに新たに都市計画道路「栄千若線」がつながる計画がありますので、延伸すれば臨海部をつなぐ道路網ができます。この都市計画道路の一部区間の事業化は未定ですが、東高島駅北地区が地区の結節点となることで都心臨海部の地区間の連携を強化し、将来的には「横浜」駅やみなとみらい地区まで行きやすくなることを目指しています。
——近くの横浜市中央卸売市場ですが、現状建て替えなどの計画はありますか。
梅木さん:市民の皆さんが利用できる施設ではありませんが、新棟3棟と既存棟を改修しているところで、今年度中に完了する予定です。
——これから東神奈川エリアに住みたいという方々に向けて一言お願いいたします。
井上さん:「東神奈川」駅は「横浜」駅の隣駅ですから、周辺に住む方々は非常に便利だと思います。気持ちよく安心して暮らしていただけるよう、商業機能なども含め住環境を整備してきました。お話したように、現在も住環境の良さを追求したまちづくりを進めています。
東高島駅北地区の土地区画整理事業は2027(令和9)年度に完了見込みで、完了すると、道路や公園などの都市基盤が整い、その後に住宅等の街区開発が進められることになりますので、ご期待ください。
都市整備局都心活性化推進部
みなとみらい・東神奈川臨海部推進課
担当課長 井上俊平さん
担当係長 梅木康之さん
所在地:横浜市中区本町6-50-10
電話番号:045-671-3501
※この情報は2025(令和7)年5月時点のものです。