森村学園幼稚園 インタビュー

遊びを通じて、主体的・能動的に動くことができる子どもを育成する「森村学園幼稚園」

「長津田」駅の南西、緑豊かな丘の上に位置している「森村学園幼稚園」。幼稚園から高校までの一貫教育を行っている「森村学園」の一員として、遊ぶことを通じて生きる力の礎を築き、知的好奇心を育てていくことを目標に教育を行っている。そんな「森村学園幼稚園」の藤原伸介園長先生に、園の具体的な教育方針などについてお話を伺った。

幼小中高一貫教育の入り口として将来を見据えた教育を

藤原園長先生
藤原園長先生

――幼稚園の教育理念についてお教えください

藤原園長:「森村学園」は、幼小中高一貫校となっています。今年度で創立106年を迎えました。創立者の森村市左衛門は明治時代の実業家で、「TOTO」や「ノリタケ」など、日本のセラミックス産業を興した人物で、日本の教育発展に多大な支援を行っていました。晩年、自分の学校を作ろうというので、東京の高輪に幼稚園と小学校を作ったのが「森村学園」の始まりです。

「独立自営」が建学の理念となっており、「正直」「親切」「勤勉」の3つの言葉を校訓としています。3つの校訓は、幼稚園の子どもたちには「森村っ子は正直だから嘘は付きません」「森村っ子は誰にでも優しいです」「森村っ子はどんなときにも一所懸命頑張ります」というように、わかりやすく翻訳して教えています。発達段階に応じて翻訳した言葉で子どもたちに伝えて、「森村学園」を巣立って行くときには誰もが「正直」「親切」「勤勉」な人間で卒業できるようにと考えています。「独立自営」は、市左衛門が実業界で生きていく中で悟った言葉なんですが、独立は一人で立つ、自営は自ら営む。一言で言えば、「自立した人間になる」という意味ですね。

読み書きそろばんはせずに遊びが中心
読み書きそろばんはせずに遊びが中心

幼稚園は一貫教育の入口なので、高校卒業時を想定した時にどういった教育をしていけばよいか、ということを基本に考えています。ただ、そう言うと勉強をする幼稚園と受け止められてしまうかもしれませんが、基本的に「森村学園幼稚園」では読み書きそろばんはやっていません。なぜかといえば、それは初等部から先できちんと育ててもらえばいいのです。小学校から先の勉強というのは、先生に教えられる受け身の授業となってしまっています。それをどうアウトプットできるようになるかということが学力として問われているものだと思うのです。幼稚園の間は、そういう体制になった時にも主体的・能動的に学習に取り組むことができる土台を作ることを大切にしています。

みんな元気いっぱい
みんな元気いっぱい

大事なのは大きくなった時に、将来自分がどんな道を生きていくかを自ら考えさせる。その土台は幼稚園の幼児期からつくっていくのです。つまり主体的に生きていくための力を培ってあげようというのが幼稚園の教育の仕方です。そして、主体的に生きるためには、どういう教育をするのが一番いいかと考えていった時に辿り着いた結論が「遊び」なんです。

森は子どもたちの絶好の遊び場
森は子どもたちの絶好の遊び場

どうして遊びなのかというと、遊びというのは夢中になれるもの。夢中になると人間は“もっと”という気持ちが湧いてきます。例えば、砂場で山を作り始め、夢中になると「もっと大きな山を作りたい」という気持ちが湧いてきます。じゃあ、もっと高い山を作るためには、どうすればいいか考えるようになるのです。こうした経験を積んでいくことが生きるための礎であり、知的好奇心の土台になると考えています。子どもたちとよく幼稚園の裏の森に遊びに行くのですが、おもちゃなんてなくても、1時間でも2時間でも遊んでいられます。それは、子どもたちが工夫をして、もっと楽しく、もっと大きく、もっとダイナミックにと、自ら考えながら遊んでいるからです。みんなと一緒にやれば、一人ではできなかったことができるということもわかる。まさに社会の中で生きていく力を育てていく。このように、良質な遊びを提供することで主体的に生きるということを繰り返し体験させる。自分で考え自分で解決し、自分で実現していく経験を幼児期の間に何度でも経験させてあげることで、主体的に生きる力が育っていきます。そうすれば小学校にあがった時も受け身にならず、どうやったら主体的に授業に関わっていけるかということが、自然に考えられるようになるのです。実際に、成績のいい子は授業を絶対に疎かにしません。未知の世界のものを知ることに喜びを感じて、じゃあこれを使えばこれができるかも、と自分で考えます。最近では、盛んにアクティブラーニングということが言われていますが、幼稚園での活動はそのほとんどがアクティブラーニングの手法で展開されているといってもいいと思います。

自ら考えさせるために必要なのは先生のスキル

3つの校訓
3つの校訓

――この教育をしていくうえで大切なことはどんなことでしょうか

藤原園長:このやり方をするときに一番求められるのは先生のスキルなんです。たとえば、去年、年長クラスで秘密基地ごっこしようということになったんです。その時は10月だったのですが、年長さんの10月というのは、そろそろ幼稚園生活の集大成をしなくてはいけない。ここで今までと同じような秘密基地ごっこをやるのでは、年長のこの時期に相応しい、良質な遊びをしたことにはならない。そこで、担任が考えたのはクラス全員で1つの秘密基地を作ろう、ということでした。ただし、そこで担任の先生がクラス全員で秘密基地を作ろう、と言ってしまうとその瞬間にそれは「させる活動」になってしまう。そこで、子どもたちが自らみんなで作ろうと言い出した体になるように言葉のキャッチボールをするんです。まずクラスの活動に仕立てようという風に閃くことがスキルですし、言葉のやり取りを通じて、自分たちがそう思ったように思わせる、これもスキルです。

これはすごく難しいことです。幼稚園の先生は台本も何もない。たまたま秘密基地を作ろうと子どもが言ったところからみんなで作らせようと閃き、さらに言葉のやり取りを通じて自分たちが全員で作った形にお膳立てしなくてはいけない。幼稚園の先生に求められるスキルは非常に高いものがあると思います。

園内の様子
園内の様子

――先生たちのスキルアップのために何かされていますか?

藤原園長:何を求めていて何に興味があるか。それから、自分の受け持っている学年が、この時期だったらこのレベルのテーマを克服しないといけないという、常に課題設定が頭のなかにきちっと入っていないといけません。そこで、私たちはルーブリック評価という評価法を使っています。

――ルーブリック評価とは?

藤原園長:子どもを評価して、まだここが劣っているから頑張りなさいというのが、小学校から上の評価方法です。ルーブリック評価は、私たちが子どもたちに提供したアクティビティがどこまで有効だったか、その効果測定を私たち自身がするための評価法なんです。

例えば、思いやりなら、幼稚園に入ったばかりの3歳児をレベル1として、3年間幼稚園で活動をして卒園していく時に思いやりという力はどうなっていて欲しいか。これをレベル5というふうに設定します。そして、節目節目で一人ひとりの子どもを対象に、その子の思いやりは今レベルいくつまで到達してるかをチェックしていく。そうすると、3歳児の1学期末の思いやりの平均レベルは5段階評価の2.5だね、などがわかります。1学期末の段階が2.5だったものが3学期終わった時にどこまで伸びているかをチェックする。その間にどんなアクティビティをやってきたかをすり合わせていくことによって、その提供してきたアクティビティが思いやりという力を伸ばしていくのに有効だったかどうかを測定することができます。

遊びをとおした教育目標もしっかりと立てている
遊びをとおした教育目標もしっかりと立てている

お子さんをここまで伸ばしますと、教育の目標をしっかりと保護者の皆さんにもお伝えしています。私学というのは、公立の施設と違って教育方針は独自に決めることができます。逆に独自に決めておかなくてはいけない。

勉強に特化した幼稚園もあれば、英語に特化した幼稚園、運動に特化した幼稚園もある中で、「森村学園幼稚園」は遊びに特化した幼稚園なのです。ただ、なぜ遊びに特化するのか、そこの裏付けがきちんとしていないといけませんし、その裏付けに基づいて教育の目標が明確に語れないといけません。

毎日の活動を振り返り、常に新しいノウハウを蓄積していく

園内の様子
園内の様子

――幼稚園の一日の流れをお教えください

藤原園長:登園したら、まずは9時45分くらいまで自由遊びを行っています。それからクラスごとの活動があって、ここでカリキュラムに則った活動が行われています。お昼のお弁当の時間が終わったらまた自由遊びがあって、1時半から1時50分までで降園しています。

――このクラス活動がカリキュラムの大きなポイントですね?

藤原園長:そうですね。前提となるカリキュラムがあって、そのカリキュラムを土台にした学期案・週案・日案と細分化した指導案を作っています。

毎日学年ごとに反省会をして、一日の活動についての振り返りをします。反省と課題と良かった点を日誌に記録をして、次の日の日案につなげていきます。一学期が終わると学期案と照合しながら、カリキュラムの想定していたことができていたかどうかを確認しつつ、ルーブリック評価で、新学期、効果測定を自分たちでしてもらう。その効果測定を繰り返しやっていくことによって、新しいノウハウが蓄積されていきます。

異学年交流も積極的に

広々とした園庭
広々とした園庭

――一貫教育ということで、小学校などと交流は行っていますか?

藤原園長:年に二回、年長と小学一年生の交流会があります。幼稚園の子どもが小学校の図書室に遊びに行く「図書室探検隊」を今年はじめて行ったのですが、とても好評でしたので、来年以降も続けていきたいと思っています。また、幼稚園の先生たちが小学校の教科会にオブザーバーとして定期的に参加しています。

園内の様子
園内の様子

――縦割り活動も行っていると伺いましたが

藤原園長:自然な形で異年齢交流ができるようになるのが目的で、6つの色グループに分けて活動しています。最初は年少の子も年長の子も、いつもと違う環境に緊張するんですが、一年かけて少しずつ活動の時間と中身を濃くしていく。一学期の間は、手遊びをしたり本を読んだりして、二学期になるとだんだん時間を伸ばしていってお弁当を一緒に食べたりできるようにして、そうやって、だんだんと密度を濃くしていって、縦割りに慣らしていく。それができるようになると自然な形で異年齢交流ができるようになる。コンセプトは「家族」で、親兄弟が変わらないのと同じように、縦割りの時のグループは、卒園まで変わらないようにしています。

緑豊かで子育てに最適な街

幼稚園ホール
幼稚園ホール

――特徴的な設備やイベントはありますか?

藤原園長:設備ではないですが、やはり森です。この自然環境はなかなか無いですね。あと、平屋なので、子どもが安心して生活できるのも特徴です。イベントということですと、二泊三日でお泊り会を「河口湖」で行います。お泊り会は、親にとっても子どもにとってもかなり高いハードルですが、皆で助けあって励まし合ってやり切るんです。帰ってきた時の子どもたちの表情はすごく誇らしげですよ。あとは、クリスマスで外国人のサンタさんを必ず呼ぶようにしています。

外観
外観

――最後に、幼稚園のある長津田の街の魅力をお教えください

藤原園長:長津田は田園都市線と横浜線がクロスするところなので、東京からも神奈川からも交通の利便性がとても良いんです。横浜も町田も近くて便利なんですが、緑の豊かさが残っている。それから、安心して暮らせるというのも魅力ですね。

森村学園幼稚園
森村学園幼稚園

森村学園幼稚園

園長 藤原 伸介 さん
所在地:横浜市緑区長津田町2695
電話番号:045-984-0046
URL: http://www.morimura.ac.jp/youchien/
※この情報は2016(平成28)年7月時点のものです。