インタビュー

文武両道を大切にする「川崎市立宮前平中学校」

1,000人以上の生徒が通い、大規模校ならではのダイナミズムを教育に生かし、生徒同士が切磋琢磨し合いお互いを高め合う環境が整っている「宮前平中学校」。創立当初からの文武両道を謳った校風は今なお健在で、校外での大会やコンテストで毎年華々しい結果も残している。「“頑張る子どもたちに対して恥ずかしくない教育を”という気持ちで、職員たちの意識も高まる」とにこやかに語る山本校長先生に、学校のこと部活のこと、この街の魅力について伺った。

大規模校ならではの切磋琢磨の教育環境

「川崎市立宮前平中学校」
「川崎市立宮前平中学校」

――貴校の沿革や生徒数などの概要を教えてください。

本校の創立は1976(昭和51)年4月で、2016(平成28)年度に創立40周年を迎えました。1,000名以上の生徒が通う大規模校です。創立当初から文武両道を旨とし、勉強にも運動にも熱心に取り組む校風を今なお引き継いでいます。

大規模校ですので、なかなかフットワーク軽く動くことは苦手ですが、この個性豊かな人材の豊富さや、子ども同士で刺激し合う環境、人に揉まれる経験など、プラス面が非常に多い。ライバルが多く、より前へ、より上へという意識も生まれて、子どもにとってはよい環境だと考えています。私はこれを「宮中千人家族」と呼んでいますが、この大規模校のダイナミズムを生かして、お互いの個性を磨き合える環境のなかで、たくましく育ってほしいと思っています。

「川崎市立宮前平中学校」山本浩之校長先生
「川崎市立宮前平中学校」山本浩之校長先生

――宮中ならではの特色ある教育活動はありますか?

本校では、2つ特色ある教育活動主軸にしており、1つ目は「キャリア教育」です。3年間を通して具体的に自分の将来を考え、その「なりたい自分」につながる進路が取れるように指導の方も心がけてます。

具体的には、1年生の時に「職業体験」として豊洲にある「キッザニア東京」を訪れ、様々な職業を実際に体験します。キッザニアというと小さな子どもが参加するようなイメージがありますが、その日はプログラムを中学生向けに変えてもらい、なおかつ使用言語を英語のみという縛りを加えて、生徒たちには「遊び」だけでない「学び」もある職業体験をしてもらいます。説明も英語、質問も英語なので、ちょっとした心の準備が必要で、よい刺激になっているようです。個人差はありますが、少ない生徒でも3種類、多い生徒ですと7種類くらいの職業を体験してきます。行く前には「できるだけ幅広く、色々な体験をしておいで」と声をかけて送り出すようにしています。

「宮前平中学校」の制服
「宮前平中学校」の制服

2年生では実際に働く場に赴き、その仕事を体験する「職場体験」に行きます。約400人の職業体験先を探すのはかなり骨が折れる作業ですが、保護者の方々にもご協力いただき、職員の関係者や、私の昔の教え子までを総動員して見つけています。体験先は200箇所以上、あまり人数が多いと体験の内容が薄らいでしまうので、基本2名ほどで伺います。2日間に渡る体験では、2日間同じ体験をする生徒もいれば、1日ずつ2つの職業を体験する生徒もいました。

医療関係や接客、そば打ち職人など、その内容は多岐にわたりますが、生徒たちはリアルな職場とそこで働くプロたちの姿を見て、それぞれ大きな刺激を受けて帰ってきます。私もなるべく多くの生徒たちから話を聞くようにしていますが、その臨場感や緊張感に鳥肌が立つような経験もあります。

様々な教育活動が実施されている
様々な教育活動が実施されている

――もう1つの特徴ある教育活動はどんなことでしょうか?

もう1つは「平和教育」です。実は2014(平成26)年度まで、3年生の修学旅行は京都・奈良に行っておりましたが、2015(平成27)年度から行先を広島に変更しました。これは、より深く日本の歴史を知り、平和の尊さを感じてもらいたいという思いから発案したものですが、保護者の方々のご意見を聞いた時、「海外でHiroshimaと言えば知らない人がいないくらいの有名な場所。われわれ日本人はもっと広島を知るべきでは」という声があがり、背中を押してくださったという経緯があります。
実は本校の生徒たちの1割は海外に1年以上滞在経験がある、つまり保護者の方もお仕事などで海外に赴任されていた方々が多いんです。ですから皆さん視野も広く、グローバルなお考えの方も多いので、子どもたちの学習に関しては非常に前向きで冷静なご意見を持っていらっしゃいます。

もちろん3年生で実際に広島に行くまで、1~2年の間にしっかり準備学習をします。特に2年生は「平和」をテーマに班ごとに計画を練って、「東京大空襲・戦災資料センター」などへグループで訪問し、発表しあう校外学習に取り組みます。色々と学んだうえで広島に行くことで、より深い歴史理解が得られると思います。
私も初回の広島修学旅行に同行したのですが、原爆資料館や原爆ドームでの彼らの様子は、実に神妙かつ静かで、真面目でした。こちらが何も言わなくても、ふざけたり大きな声を出す生徒はおらず、語り部の方の話に涙ぐむ姿も見られました。旅行後には語り部の方から「生徒さんたちの真面目な態度に感動した」というお手紙を逆にいただいてしまうくらいで…。改めて宮中の生徒たちの感受性や真面目さが浮き彫りになり、行かせる価値のある修学旅行だったと思っています。

教室内の様子
教室内の様子

――先生方の意識やモチベーションも自然と高まるのではないですか?

そうなんです!保護者の方々の視野の広さのお話は先ほどしましたが、生徒たちも真面目で上を目指す子たちが多いなか、それに対して恥ずかしくない教育をしていこうというのが我々職員たちの気持ちです。彼らの知的好奇心に対して応えるだけでなく、「分かりやすい授業」と「考えさせる授業」をしたいと思っています。
「分かりやすい授業」は文字通り理解しやすい授業という意味ですが、川崎市内の中学校の各クラスに導入されている50インチの大型ビジョンなども利用して、視覚に訴える工夫した授業を心がけ、理解度をアップしていこうということ。

校内には自然も多い
校内には自然も多い

「考える授業」は、簡単に答えが出るような問題ではなく、疑問を投げかけ、それぞれの生徒がそれぞれの意見を持てるような問いを与える授業。知るだけで終わらず、次のステップへつながるような授業を心がけようと考えています。実は宮中の子どもたちの学習レベルは高いので、一問一答形式の問題ではすぐに終わってしまうんです。答えを覚えて終わるのではなく、彼らの将来につながるような授業を目指します。

宮中には若い教師が多いのですが、そこに経験豊かな熟練教師たちがサポートに入ることで強力なタッグを組むことができます。生徒が多いということは、先生の総数も多いということ。たくさんの大人の多角的な視点で子どもたちを見られるという利点も最大限に生かして、日々の教育活動にまい進していきます。

「運動も勉強も手を抜かずに全力で取り組む

想いを熱く語っていただいた山本校長先生
想いを熱く語っていただいた山本校長先生

――部活動も盛んだとお聞きしました。

これは開校当初から「運動も勉強も手を抜かずに全力で取り組む」というのが、宮中の方針のようです。多くの部が県大会に出場し、関東大会・全国大会まで行くというのも珍しくない。陸上の全国大会1500mで、1位と2位が宮中だったということもありました。2015(平成27)年は水泳の男子メドレーリレーが全国7位になったり、近年は水泳部と陸上部が頑張っていますが、サッカーやバレー、体操、ソフトボールなども県大会に出場し、優秀な成績をおさめています。

運動部も文化部も活躍している
運動部も文化部も活躍している

また文化部も負けていないんです。ホンダのエコマイレッジチャレンジという、1Lのガソリンで何キロ走れるかというエコカー発明の全国大会があるのですが、実は2010(平成22)年と2011(平成23)年に宮中の工学部が優勝をしています。揃いのつなぎを作って毎年決勝までは必ず出場するほどの実力です。公立中学の工学部ながら、部員は80名前後います。
また科学部も日本学生科学賞神奈川県作品展では、学校賞や個人賞を毎年いただいていますし、吹奏楽部も川崎市のコンクールで金賞を受賞。英語弁論大会では、川崎市代表になったのも宮中の生徒。何やら、わが子自慢のようになってきましたが(笑)、とにかく先輩方の功績を引き継ぎ「中途半端なことはできない」と、伝統的に皆が力を出し切る生徒が多いんです。

創立40周年を超える学校で、先生も生徒も定期的に入れ替わっているにも関わらず、こういった結果が継続的に残せるのは、彼らの前へ前への意識と、やはり大規模校のライバルの多さ、切磋琢磨する環境が大きく影響していると感じます。

文武両道の精神が大切にされている
文武両道の精神が大切にされている

――地域の方々との関わりはどうなのでしょう?

学区にある5つの町会の清掃活動などには部活単位で積極的に参加するようにしています。また防災活動に関しては、いざという時こそ地域の連携が最も大切になるので、必ず生徒や顧問の先生も参加してもらうように働きかけています。

もちろん入学式や運動会、卒業式などの大きな式典には地域の方々も来ていただきますし、地域のお祭りなどにも私たちが参加することで、交流をしています。

また吹奏楽部は、お祭りや文化祭、老人福祉施設、障害者施設などによくお声をかけてもらっているので、出張演奏会を頻繁に開いています。コンクールではない演奏会ということで、部員の生徒たちもコスチュームを工夫したりと楽しい演奏ができているようですね。

多くの掲示物がある教室内
多くの掲示物がある教室内

――宮中の生徒たちの様子を聞かせてください。

ひとことでいうと、「きちんと育てられている」「善悪をわきまえている」ということでしょうか。学校内の雰囲気が穏やかで落ち着いているのは、そんな子どもの心を反映しているのだと感じます。とにかく校内の物品が壊れない、なくならない。普通、部活用の物品などが納品されて、新品のボールなどが置いてあったりすると、1つや2つなくなったり誰かが持ち出してしまったりということは起こりがちなんですが、本校ではそういったことも皆無です。

そして保護者の方々を拝見すると、その理由が理解できるような気がします。保護者会への参加率も高いですし、何より学校に対して協力的。それも闇雲に協力するというのではなく、「子どもにプラスになる」「納得できる」と思えば非常に前向きに協力してくださる。逆に納得できないものに対しては、質問が出たり、新しいアイデアを提示してくださったりします。それも「筋が通らないダメ出し」というのではなく、前向きに「こうしたら?」という意見があがる。先ほども言いましたが、そういった生徒・保護者の雰囲気を受けて、職員たちも背筋が伸びる。学校の教育環境としても、良い相乗効果が生まれていると言えます。

練習を見守る保護者たち
練習を見守る保護者たち

――この地域の魅力を教えてください。

学校自体、住宅地の中にあって静かですし、非常に文化的な雰囲気がある。生徒たちや家庭環境についても今までお話した通りです。
以前、さまざまな学校が参加する「こども国会」というのがありまして、子どもたちが学校ごとに発表をする機会があったのですが、その時、事前に子どもの原稿を職員がチェックすることなく任せていたので、何を話すのかと待ち構えていたら、宮中の生徒の第一声が「私たちの街は、治安のよい街です!」だった。場内は微笑ましい雰囲気に包まれて、私たちも幸せな気持ちになりました。

子ども自身が、自分たちの街は「安心できる」「犯罪が少ない」と感じている・誇りに思っているのは、何よりの勲章ですよね。そんな街に住む自分は、恥ずかしい行動は取れない。これもまたプラスの相乗効果を生んで、さらに素敵な街になっていくのだと思います。
宮前区の中心として必要な公共施設もこの地区に集中していますし、買い物環境も整っていて都心までも30分足らずと、とても暮らしやすい場所だと思いますよ。

川崎市立宮前平中学校 校長 山本浩之先生
川崎市立宮前平中学校 校長 山本浩之先生

川崎市立宮前平中学校

校長 山本浩之先生
所在地 : 川崎市宮前区宮前平2-7
TEL : 044-855-3214
URL : http://www.keins.city.kawasaki.jp/3/ke303201/
※2016(平成28)年8月実施の取材にもとづき、2018(平成30)年4月に一部修正を加えた内容です。記載している情報については、今後変わる場合がございます。