サンモール・インターナショナルスクール 理事長インタビュー

横浜の地で145年の歴史を誇る「サンモール・インターナショナル・スクール」

明治時代から外国人が数多く居留し、今なお色濃く西洋文化が残る、横浜市山手地区。その山手の中心地には、外国人が創設した学校がいくつも残っている。そのひとつ、「雙葉学園」の裏手に本牧埠頭を見下ろすように建っている「サンモール・インターナショナルスクール」は、外国人の子弟や帰国子女を対象にした、定員500名ほどの中規模校だ。今回はこちらを訪問し、理事長であるジャネット K.トーマスさんに学院の魅力や横浜の街の魅力についてお話を伺った。

女子教育の場として始まった歴史

十字架をあしらった校舎
十字架をあしらった校舎

――1872(明治5)年に創設された学園ということですが、どのような経緯からつくられたのでしょうか?

ジャネット理事長:横浜港が開港して以来、この地には外国人が多く住んでいました。外交官や財界人、教育関係の人もいました。国籍もフランス人、イギリス人など多彩でした。彼らの多くは、子どもたちが大きくなると、男の子たちについては自分たちの母国に帰らせ、親戚に預けるか寮に入れるなどして母国の学校に行かせていました。ところが女の子たちには、そのような教育は行われませんでした。

図書館
図書館

そういった中で娘たちに教育の場が欲しいという声があがり、その呼び掛けに当時の聖嬰イエスズ愛徳教育修道会(現在の「幼きイエス会」)のシスターたちが日本にやって来まして、学校が始まりました。その年には学校のほか、孤児院も始めました。その後、中流家庭以上の日本人のお子さんたちの学校として、1900(明治33)年に「紅蘭女学校」がつくられました。そちらは1958(昭和33)年に「雙葉学園」になりまして、この隣の「横浜雙葉学園」のほか、ご存知のように、東京の田園調布や四谷、福岡、静岡にも学園があります。「雙葉学園」は私どもの学校とは姉妹校にあたります。

私どもの学校については、当時、「サンモール・コンベントスクール」と呼んでいましたが、時代の要請に合わせて、「サンモール・インターナショナルスクール」と呼ぶようになりました。1980年代まではずっと女子校でしたが、それ以降は共学となっています。現在は男女がほぼ半々です。

ゆったりとした間隔で机が置かれた教室
ゆったりとした間隔で机が置かれた教室

――現在はどのぐらいの生徒が通っているのでしょうか?

ジャネット理事長:日々人数は変動していますが、今日(2017(平成29)年2月)の時点では478名です。年齢は2歳半から、高校3年生までです。国籍については、二重国籍、三重国籍など複雑な生徒もおりまして、ひとつの国籍だけを持っている生徒で言えば25ヵ国です。二重国籍、三重国籍も含めれば36ヵ国です。

――日本人の子どもは入学できるのでしょうか?

ジャネット理事長:日本の学校からの編入は認めていません。外国に行って戻ってきて、英語を中心に教育をするインターナショナルスクールを求めている方で、ご両親が日本人という方はいます。いわゆる帰国子女ですね。また、長い間女子校だったので、お母さんやおばあちゃんがここを卒業して、日本人の方と結婚し、そのお子さんが通っている、というケースもあります。卒業生のお子さんの中には、日本国籍の方もいます。また、ほかのインターナショナルスクールからの編入も受け入れています。

世界で活躍できる人材を育てる

様々な国籍の生徒を受け入れる
様々な国籍の生徒を受け入れる

――特色のある教育・学習があれば教えてください。

ジャネット理事長:幼稚園の「インターナショナル・モンテッソーリ・プログラム」は、日本の幼稚園でも実施している園が増えてきていますが、これを最初に取り入れたのはサンモールです。小学校では「インターナショナル・プライマリー・カリキュラム」というものを取り入れていますが、これも日本ではサンモールが初めて取り入れたものです。

9年生と10年生、日本で言う中学3年生、高校1年生については「IGCAC」というプログラムを取り入れています。これは英国のケンブリッジ大学で考案されたプログラムです。11、12年生では、教育プログラム・国際バカロレアの提供するプログラムのひとつ「ディプロマプログラム」を行っています。また、学院内のひとつの教室を使って「フレンチスクール」も開設しています。これはインターナショナルスクールのプログラムではなく、フランス当局の方針に基づいたフランスの教育をフランス語で行っています。こちらも、フランス国籍の方々から新しくニーズがあったために、始めたプログラムです。

発表会などを行うホールも完備している
発表会などを行うホールも完備している

このほか、まだ幼稚園に行けないお子さんに対して「トドラーズクラブ」というプログラムも行っています。これは幼稚園も保育園も行けずに日本語もしゃべれない、という子が対象です。週に1回だけですが、無償で行っています。幼稚園のスペースを使ってアクティビティをして、友だちをつくってもらうもので、お母さんや乳幼児の交流の場にもなっています。また、幼稚園や小学校については、両親がお仕事をしている方も多いので、学校の始まる8時よりも前、また、幼稚園や小学校が終わる15時以降に子どもたちを預かるサービスも行っています。

様々なプログラムに取り組んでいる
様々なプログラムに取り組んでいる

――国際バカロレア機構のディプロマプログラムを受けることで、海外への大学進学は有利になるのでしょうか?

ジャネット理事長:大学進学には、サンモールの卒業証書だけで十分ですが、ディプロマを取得すれば有利になります。また、点数によって単位を認めてくれる大学もあります。点数次第では、大学1年の単位をすべて取ったとみなして、2年から入れる場合もあります。

イギリスの大学では、国際バカロレア機構のディプロマをやっていれば、その点数次第ではありますが、すぐに専攻を始めることが可能です。また、何かを専攻して勉強したい時に、ディプロマの科目で定められた点数を取っていなければいけない、といった制限があり、イギリスなどの大学進学を考える生徒たちにとって、ディプロマは大事になってきます。

異文化に触れあう環境

音楽教室
音楽教室

――「Adult Enrichment Program」というものを実施しているそうですが、どのような内容のプログラムなのでしょうか。

ジャネット理事長:「Adult Enrichment Program」については、1990年代から始まった取り組みで、父兄、またはこのコミュニティに住んでいらっしゃる方も含めて、一緒に何かをやって、学んでいくというものです。学校を出たら学業が終わるのではなくて、「生涯ずっと勉強をする」という趣旨です。大人向けのプログラムで、現在、種類は40、50ほどあります。

単発で、例えばどこかに民家の見学へ行ったり、もちつきに参加するというものもあります。また、月に何回か定例で行うものもあります。語学のクラスや、華道や合気道など、日本の文化を学ぶものはそうです。各国のお料理を学ぶ講座もあります。

「Adult Enrichment Program」の掲示物
「Adult Enrichment Program」の掲示物

このプログラムは父兄およびコミュニティの方に、ボランティアで講師をしていただいています。特に日本語を喋れない方で、自分で講座を見つけられない方には人気があります。父兄以外の方が参加する場合は、何かを教えてくれる代わりに、メンバーに入れるという仕組みになっています。ですから、お互いが講師になったり、生徒になったりします。

――日本で言えば、幼稚園から高校までの一貫校ということですが、異年齢の連携なども行われていますか?

ジャネット理事長:「インターナショナルデイ」の日には午後の2時間だけですが、幼稚園生から12年生までの子たちが、年齢に関わらず混ざって、上の子たちが企画したアクティビティやゲームをして楽しみます。ここではエンパシー(思いやり・共感)をテーマにしています。「スポーツデイ」や「ジャパニーズカルチャーデイ」の日にも、みんなで日本文化に触れる体験をしたり、あるいは中高だけで何かを行ったり、ということはあります。小学校5年生の子が1年生の子のところに行って、本を読んであげるといった交流もあります。

小学校から中等部への切り替えの時期には、上の子たちが5年生(小学校最高学年)のところに行って、中等部についての説明をしています。同じことを8年生から9年生の間(中→高)でもやっています。

体育館の様子
体育館の様子

――少人数で密度の高い教育を行うということに力を入れているそうですね。

ジャネット理事長:じつは1990年代の半ばぐらいにインターナショナルスクールのニーズが増えた時期がありました。その時には、父兄や教員から、もっとクラスを増やしてほしいという要望がありました。しかし理事会では、「価値のある教育を提供し、一人ひとりにしっかりケアをすること」を最も重要なことだと考えて、「小さい学校でいよう」という決断をしました。生徒数を増やすことは難しいことではありません。しかし、多ければ良い、というものではありませんから、クオリティを大事に、小さな学校でありたいと考えています。

横浜の地に根差し、地域とともに成長する

生徒それぞれが得意な部活動に励む
生徒それぞれが得意な部活動に励む

――地域や近隣の学校とは、どのような連携をされていますか?

ジャネット理事長:地域や学校との連携では、うちはアイルランド系の学校なので、元町のセントパトリックデーパレードに参加しています。また、姉妹校である「雙葉学園」とは文化的な交流も行っています。主に向こうの生徒さんが来て、うちの日本文化の日に、着物の着せ方を教えてくれたり、お茶の点て方を教えてくれたり、という交流です。

様々な日本文化に触れる
様々な日本文化に触れる

また、横浜市のスーパーサイエンススクールである「横浜サイエンスフロンティア高等学校」とはパートナーシップを組みまして、交流がさかんです。一緒に実験をしたり、こちらに来て英語を学んでもらったり、あちらに行って科学関連のフォーラムに参加したり、という交流があります。また、本校の特性上、いろいろな学校から先生方の研修や見学も多く来られています。神奈川県の方、文科省の方、国際バカロレアをこれから始めようという学校の方など、いろんな方をお迎えしています。

――地域の日本人家庭との連携などはありますか?

ジャネット理事長:先ほどの「Adult Enrichment Program」などはそのひとつです。また、毎年4月29日に「インターナショナルフードフェア」を開催しております。この日には、父兄がいろいろな国の食べ物を用意してくれ、生徒たちのパフォーマンスも行われます。今年は合気道、アイリッシュダンス、ブラジリアン柔術などがありました。こういったイベントの時には、誰でも入っていただけますので、地域の方や、卒業生もたくさん来ています。

様々な国籍の生徒を受け入れる
様々な国籍の生徒を受け入れる

――最後に周辺の街の魅力について教えてください。

ジャネット理事長:まずひとつは、横浜はいろいろなカルチャーの発祥の地であり、この近辺にもそれに関わる場所がたくさんあるということです。戦争でも空襲を受けずに残ったため、明治時代の洋館が残っており、一部は美術館などにもなっています。実際に外国人が多く暮らしていたので、墓地もありますし、教会も2つありますし、病院もあります。

学園の下にある「キリン公園」などはビール発祥の地ですし、アイスクリームも、ナポリタンも、パンも、タイルも、競馬も、ガス灯も、ラグビーも、鉄道も、みんなこの辺りか横浜が発祥の地です。教育についても、サンモールの修道女たちが、いろいろな意味で貢献してきたと思っています。

「港の見える丘公園」
「港の見える丘公園」

具体的な場所で私が好きなのは、「外人墓地」「港の見える丘公園」、日本で初めてのテニスコート、外交官の家、「エリスマン邸」「ベーリック・ホール」「えの木てい」など、たくさんあります。みなとみらいエリアや、赤レンガも好きです。日本の近代化はここから発祥した、素晴らしい土地だと感じでいます。

K.トーマスさんとO.遠藤さん
K.トーマスさんとO.遠藤さん

サンモール・インターナショナルスクール

理事長 ジャネット K.トーマスさん(左)
学院長 キャサリン O.遠藤さん(右)
所在地:神奈川県横浜市中区山手町83
URL:https://www.stmaur.ac.jp/
※この情報は2017(平成29)年2月時点のものです。